第五十一話 堅物のことその二
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「確かに生真面目じゃがいいところで融通が利く」
「そういえばですね」
「公平でな。爺も公平じゃがとかく小言が過ぎる」
平手の小言は主にだけ向けられるものではないのだ。それこそ他の家臣達にとっては実に厄介なものであり続けているのだ。
「その勘十郎じゃが戦は弱いがじゃ」
「そうしたことで、ですね」
「政もできるしな。あれでよい」
「では最後の」
「うむ、権六じゃな」
そのだ。柴田はどうかというのだ。
「あれはのう」
「御困りですか?」
「ある意味爺以上に頑固じゃからのう」
「そう聞いていますが」
「左様じゃ。よくそれで慶次も叱っておるがな」
「あの慶次殿をですか」
「あ奴が悪戯をする」
慶次の常だ。彼は戦でなければとかく悪戯をするのだ。その生来の悪戯好きが柴田にも向けられるのだ。そうしてなのだ。
「権六はその都度怒りぶん殴る」
「それも繰り返しですね」
「慶次も慶次じゃが権六も権六だ」
「御困りですか」
「いやいや、楽しんでおる」
そうしているとだ、信長は帰蝶に笑いながら話す。
「権六は誰であろうが全力で向かう」
「どんな悪戯にもですね」
「そうじゃ。だからよいのじゃ」
そうだというのだ。
「それが権六じゃ」
「だからいいのですね」
「うむ。我が家の堅物も必要じゃが」
「盟友としての堅物もですね」
「竹千代がよい堅物であればよいのう」
こんなことも言う信長だった。
「さすればわしもやりがいがある」
「色々とですね」
「そうじゃ」
こうした話をしていた。そしてだ。
ここでだ。侍女が来てだ。信長に対してこう言ってきた。
「林様が来られました」
「ほう、新五郎がか」
「はい、そうです」
兄の方がだ。来たというのだ。
「それでどうされますか」
「会わぬ筈がない」
信長の選択肢は一つしかなかった。これだ。
「では行こう」
「わかりました」
こうした話をして、であった。信長は席を立ち林の前に出た。するとだ。
林はだ。この話を信長にしたのだった。
「殿のお言葉通り」
「都や大和のことを調べたか」
「はい、それでなのですが」
「何か面白いことがわかったか」
「物騒なことになろうとしております」
そうだとだ。林は曇った顔で述べた。
「三好家の主三好長慶がなくなりましたが」
「では家中でややこしいことになったな」
「はい、三好三人衆と大和の松永久秀がです」
「一族の者と執権がか」
「争いをはじめようとしております」
そうなっているというのだ。都の周りでは。
「このままでは近いうちに」
「大きな戦が起こるか」
「そうなるかと」
「わかった」
ここまで聞いてだ。信長は頷いた。
そしてそのうえでだ。林にあらためて尋ねた。
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