第五十話 徳川家康その十一
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るは及ばざるが如しだ。忘れるな」
「やれやれ、勘十郎兄上は相変わらず厳しいですな」
「それもそなたを思ってのこと」
やはり厳しい。口調もまた。
「それもわかれ」
「わかれと仰いますか」
「左様じゃ。本当に誰に似たのやら」
「わしじゃな」
ここで信長が信行に言った。
「こ奴はわしに似たのじゃろう」
「兄上にでございますか」
「顔立ちだけでなくな」
見れば見る程似ていた。しかし似ているのはそれだけではないというのだ。
「奇矯なところはよく似ておるわ」
「兄上の奇矯とはまた違うのでは?」
「そうかのう」
「はい、違います」
こう信長に話すのだった。
「そこはです」
「茶にのめり込んでおるのは似ておると思うが」
「兄上の奇矯は天下の奇矯です」
そうしたものだとだ。信行は話した。
「この者の奇矯は茶の奇矯ですから」
「わしの奇矯は随分と大きいのう」
「まさに天下の奇矯です」
また言うのであった。
「しかも大きくなっております」
「ははは、ではこのまま大きくなってじゃ」
どうするか。信長は笑いながら話した。
「天下を奇矯で覆おうぞ」
「そう思うことこそが奇矯でございます」
信行はやや呆れた笑みで兄に話した。そしてそのうえでだ。立派な茶器を手にしてそのうえで。彼もまた茶を楽しむのだった。
第五十話 完
2011・7・20
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