第五十話 徳川家康その十
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平手、信行、そして弟の一人である長益、信長を明るくさせた様な顔の彼と四人で茶室の中で茶を飲みながら。こんな話をしていた。
「茶器ものう」
「その価値ですな」
「そのことですね」
「そうじゃ。尾張ではよく知られておらんな」
先の川尻との話を思い出しながら話すのだった。
「どうもな」
「やはり。茶がまだ深くなっておりませぬ故」
そのせいだとだ。茶に造詣のある平手が答えた。
「それは仕方ないかと」
「そうなるか」
「それもこれからです」
平手は信長にまた話した。
「茶器のことをわかるのも」
「茶が深くなりじゃな」
「はい、それからです」
あくまでだ。それからだというのだ。
「ですから今はああしてお話され」
「そうして茶もしていってじゃな」
「そうすると宜しいかと」
「戦ばかりでは心が荒む」
ここでこんなことも話す信長だった。
「舞や蹴鞠や和歌もよいがじゃ」
「その他にですな」
「うむ。そうした公家のものの他に」
そのだ。茶をだというのだ。
「武家のものとして確立もさせたいしのう」
「茶器もですな」
「茶器を渡せばじゃ」
それでどうかというのだ。茶器を褒美として渡すことはだ。
「よい褒美になる」
「確かに。領地ばかり与えては」
そうしていくとどうなるか。信行がこのことを話した。
「そのうち領地はなくなりますな」
「それも困ることじゃ」
そのこともだ。信長は頭の中に入れていた。
そしてそのうえでだ。彼はこう話すのだった。
「褒美は領地だけではなくじゃ」
「茶器もですね」
「その他に宝もあるがじゃ」
信行に対して話していく。
「その宝の一つとしてじゃ」
「茶器もですか」
「その通りじゃ。実際に茶器は価値がある」
価値があるからこそだ。褒美とするというのだ。
「後はその価値を教えてやるだけじゃ」
「左様ですか。それにしても」
信行は今自分が手にしている茶器を見た。それは。
茶せんだ。それを見て言うのだった。
「この茶せんもまた」
「わかるか?その価値が」
「少しは」
こう答える信行だった。
「兄上と爺に常に教えてもらっているので」
「そうじゃ。茶器はその茶せんもじゃ」
「価値があるというのですね」
「釜にしろじゃ」
今度は茶を作るだ。それの話をするのだった。
「何でも松永久秀は相当な釜を持っておるらしい」
「あれですな」
その話を聞いてだ。すぐにだった。
平手が応えてだ。その釜の名前を言ってきた。
「平蜘蛛ですな」
「そんな名じゃったか」
「あれこそまさに天下の名器とか」
そこまでの茶器だというのだ。
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