暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission6 パンドラ
(4) ニ・アケリア村 小川の堤防(分史)
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とミラだった。
 正史世界でミラと知り合っていたメンバーはおのおの心中穏やかではなかったようだが、ユティたちエレンピオス組(アルヴィン除く)には、そう関係のない人物だ。エルはミラに手製の料理で吊られ――もといミラと意気投合したが。

 だが、ミラの姉・ミュゼが帰宅して和やかな空気は一変した。ミュゼはミラを人が見る前で幾度もぶった。そしてミラを外に連れ出した。ミラは厳しさに徹した声で、早く出ていけ、と告げて家を出て行った。

時歪の因子(タイムファクター)はマクスウェル姉妹の姉のほうだった」
「村人に聞くところによると、目が視えないあの大精霊は、妹に毎晩あの霊山まで自分を送らせるらしい。山頂で何をしてるかまでは、妹も知らないそうだが」
「妹に隠し事をする姉」
「やめてくれ。その手の皮肉はアルフレドで聞き飽きた」
「山頂で一人になるなら、無防備。今なら数はこっちが上。会ってみて、ミュゼはクロノスほどじゃないって分かった。大精霊にも格の違い、あるのね」
「末恐ろしい子だ」
「ワタシは道標を探して何年もクロノスと戦ってるユリウスのがオソロシイ」
「アレは単なる慣れだ。きっと君にもできるぞ」
「ワタシ?」
「クロノスは人間を見下して、しかも己の権能に頼り切りだ。時間の巻き戻しさえ防いでダメージを蓄積させれば、根負けして撤退するんだ。奴はプライドだけは無駄に高い。負けたから撤退とは考えていない、自分が『見逃してやってる』と思い込んでる。そして何故撤退せざるをえなかったかを省みない。精霊が人間より上だというのが奴の中で常識だから。結果、馬鹿の一つ覚えに同じスタイルで挑んでくるから、対策が立てやすいってわけだ」

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち。

「すごい分析力」
「伊達にクラウンは名乗ってない」
「ね、もっと聞かせて。クロノスの話。精霊の話」

 ユリウスのコートの袖を引く。ユリウスは迷惑がるかと思いきや、意外と満更ではない様子でしゃべり始めた。

「今のはクロノスだけじゃなく、大精霊のほとんどに適用される。どうしてか分かるか?」
「んと……精霊は自分がすごく強いと思ってる、から?」
「その通りだ。事実、俺たちみたいに特別な才能でもない限り、人間は精霊に勝てない。精霊が人間より遙かに強大なのは否めない。そんな力関係が何千年も続けば、精霊が自惚れるには充分だろう?」
「そっか。外敵がいないから、進化の必要がない。『強くならなきゃいけない』と切羽詰まったりしないから、ずっと一定のレベルでバトルスタイルなのね」
「正解だ」

 ユリウスは満足げに笑った。ごとん、と心臓の律が狂った。

(とーさまの笑い方。教えてもらったことちゃんとできたワタシを、褒めてくれる時の顔)

 
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