第五十話 徳川家康その二
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「元康から変わるのじゃな」
「はい、左様です」
「そちらも全て変えられたうえであらたに歩まれるとか」
「その為にもとのことです」
「それで名前を変えてじゃな」
氏真もその事情はわかった。そのうえでだ。
再びだ。供の者達に尋ねた。
「ではそのじゃ。竹千代殿の新しい名は何じゃ」
「家康というそうです」
「それがあの方の新しいお名前とのことです」
「徳川家康じゃな」
氏真はこの名前を口にしてだ。そして覚えるのだった。
そうしてだ。その名前自体についても言及した。
「よい名じゃのう」
「前の松平よりもですか」
「さらによいと言われるのですね」
「うむ。何か今までよりも大きくなるようなな」
そうした名前だというのだ。
「よい名じゃ」
「では。この度の改名はですか」
「あの方にとってもよいことだろ」
「そう仰るのですね」
「よい。どうやらもう竹千代と言ってよくはないな」
今度はこんなことも言う氏真だった。そう言ってだ。
あらためてだ。供の者達にこう話した。
「してじゃ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「茶はどうじゃ?」
言いながらだ。茶を早速淹れてだ。
そうしてだ。その茶を彼等に差し出したうえでこう言うのであった。
「ささ、飲むのじゃ」
「あの、茶をですか」
「馳走して頂けるのですか」
「何でも堺に千利休という者がおるらしい」
この名前が出た。ここで。
「その者は茶に身分はないと言っておるそうじゃ」
「茶に身分はない」
「それはまた変わった話ですな」
「そうした考えがあるのですか」
「それはまた」
「そうらしいのじゃ」
いぶかしむ彼等にだ。氏真はまた話した。
「それで茶室への入り口はあえて狭くし」
「まず入り口をですか」
「そうして」
「さらに。刀は置いて入る」
そのだ。武士の命と言えるそれをだというのだ。
「そのうえでこれまたあえて狭くした茶室で茶を飲むらしい」
「誰でもですか」
「そうするのですか」
「左様じゃ。とにかく茶の前には誰もが同じだそうじゃ」
それがだ。茶だというのだ。
「だからじゃ。御主達もじゃ」
「ご一緒させて頂いて宜しいのですね」
「だからこそ」
「うむ、共に飲もうぞ」
「では。お言葉に甘えまして」
「そうさせてもらいます」
こうしてだ。供の者達も氏真の淹れたその茶を飲むのだった。彼等がこうして茶を楽しんでいる時にだ。その松平、徳川はどうかというと。
まずはその名前を変えた徳川家康がだ。家臣達に述べていた。
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