第四十九話 認めるその十
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「ならばじゃ」
「このまま。国人達は織田につき」
「織田は戦をせずに己の力を強くしていく」
「そしてこれが続けば」
「我等は」
「そうなる。そして龍興はそうしたことがわからん」
それもだ。全くだというのだ。
「これではどうしようもない」
「この斉藤が滅びますか」
「ここで」
「それも時が選んだことか」
義龍は上の天井を見上げながら呟いた。
「それもな」
「時がですか」
「斉藤ではなく織田を選んでいる」
「この美濃の主に」
「そうやもな。してじゃ」
どうなるか。義龍はさらに話した。
「織田がこの美濃を手に入れる」
「さすればこの美濃の八十万石、二万の兵がですな」
「織田のものになる」
「そうなります」
「織田は二百万石を超え兵も五万に達する」
義龍はこのことも話す。
「天下随一の家となる」
「そこまでなりますな」
「あの織田がそこまでの力を持ちますか」
「後は思うがままじゃ」
こんなことも言う義龍だった。
「美濃は都にも近いしのう」
「では都も抑え」
「そのうえで」
「天下も夢ではない」
ここまで言うのだった。
「美濃まで抑えればな」
「尾張、伊勢に志摩に加えて」
「美濃もなると」
「土地としてもな」
美濃の重要さは義龍もよくわかっていた。伊達にこの国の主ではない。そのことはわかっていた。だからこそここで言うのだ。
「この地を手に入れればじゃ」
「織田はそこから雄飛しますか」
「尾張の一大名から」
「父上の目は確かだった」
臨終の間際だからこそ言えた。このことが。
「あの者のことをよくわかっていた」
「織田信長のことを」
「あの者のことを」
「わしはわかっていなかった」
彼はだ。今まではなのだった。
「しかし。今になってわかった」
「斉藤は織田に従いますか」
「その下につきますか」
「なる。最早な」
こう話してだった。その数日後だ。
義龍は遂にだ。こと切れた。その前にだった。
側近達にだ。この言葉を告げた。
「帰蝶にじゃ」
「帰蝶様にですか」
「あの方に」
「伝えよ」
こうだ。彼等にだけ話すのである。
「そなたの亭主と共に何時までも楽しく過ごせとな」
「はい、それでは」
「その様に」
「それだけじゃ。ではな」
ここまで言ってだ。そうしてだった。
義龍は息を引き取った。こうして信長の宿敵と言えた彼は信長に屈することはなかったが病に屈してだ。退場したのであった。
このことはすぐにだ。尾張にも伝わった。それを聞いてだ。
信長は一旦目を閉じてだ。それからだ。
再び目を開き。傍らにいる帰蝶に話した。
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