第四十九話 認めるその八
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それでだ。次第にだ。
織田に誼を通じる国人達も出て来ていた。尾張との境にいる国人の中には迷わずに織田に従う者達も出て来ていた。それを見てだ。
義龍は言った。彼は病を得て床の中にいる。そこにいてだ。
彼はだ。こう彼の腹心達に言うのである。
「そうか。境ではか」
「はい、出ております」
「織田につく国人達がです」
「僅かですがそれでも」
「出ております」
「厄介なことだ」
話を聞いてだ。彼は言うのだった。
「やはり織田と浅井が手を組んだことはか」
「はい、そうです」
「国人達の間で不穏な空気が漂っています」
「このままではです」
「危ういことになります」
「わかっている」
それはだ。わかっていると返す義龍だった。
だがそれでもだ。彼は起き上がれずにだ。こう彼等に言うだけだった。
「ではその者達に兵を送れ」
「そうしてですね」
「滅ぼせと」
「そうせよ。謀反は許さん」
そうだというのである。
「兵を送れ」
「はい、ですが」
「そのことですが」
「三人衆に不破か」
義龍は家臣達が口ごもるのを見てだ。すぐに察して述べた。
「あの者達が動かぬか」
「はい、それに竹中もです」
「この者達とそれに連なる国人達がです」
「全く動きませぬ」
「左様か
それを聞いてだ。義龍は。
床の中で考える顔になってだ。こう言うのだった。
「ではじゃな」
「国人達を討つ兵はです」
「殿が御自ら動かされるしかありません」
「さすれば集ります」
「因果なことじゃ」
また床の中で言うのだった。そこから出ることは最早できなかった。
「わしは最早幾許もない」
「ではあとは」
「龍興様が」
「あれしかおらぬが」
義龍の子は彼しかいない。だから次の美濃の主は必然的に彼になる。だがそれはどうかとだ。義龍は病でやつれた顔で言う。かつては大柄で顔付きも厳しかったが今ではだ。見る影もなくなっている。
その顔でだ。彼は言った。
「駄目じゃな」
「駄目とは」
「といいますと」
「龍興では駄目じゃ」
これが彼の今の言葉だった。
「到底な」
「ですが美濃の主はです」
「あの方しかおられません」
「ですから」
「だから余計に駄目じゃ」
その龍興しかいないという現実がさらにだというのだ。
「あれは。美濃を支えられん」
「ではこのままでは」
「織田がですか」
「この国をですか」
「攻め取りますか」
「そうなるやもな」
そしてだ。さらにだった。
義龍はだ。かつて父が言ったことをだ。ここで話すのだった。
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