第十二話 一人ではないその七
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「食べない方がいい」
「ああ、あれですね」
高橋もだ。イカ墨のスパゲティを食べながら工藤の言葉に応える。
「俺一回陸自さんの基地に行ったんですよ」
「どうしてだ?」
「親が自衛隊のイベントに遊びに行って」
「そこで陸自さんのか」
「カレー食わせてもらったんですよ」
そしてそれがだというのだ。
「あんなまずいカレー食ったことなかったですよ」
「それ程だったのか」
「はい、あれは凄かったです」
悪い意味でそうだというのだ。
「何か素人がキャンプで作った感じで」
「その通りだ」
「その通りっていいますと」
「陸自さんには調理の職種はない」
工藤は驚くべき事実を話した。
「兵隊が持ち回りで作る」
「完全な素人さんがですか」
「彼等が作っている」
それが陸自の食事なのだ。
「だからまずくて当然だ」
「凄い話ですね」
「俺も実際に陸自さんに研修に行きだ」
工藤もだ。そこで知ったというのだ。
「驚いた。そのまずさに」
「陸自さんも大変ですね」
「海自や空自さんはグルメだ。しかしだ」
「陸自さんはなのですね」
「イギリス人だ」
そこまでいくというのだ。
「期待してはいけない」
「絶対にですね」
「そうだ。それでこのスパゲティだが」
「美味いですね」
「プロみたいだな」
工藤は高橋にこうまで言う。トマトのパスタを食べながら。
「よく作っているのか」
「ああ、実はな」
中田は工藤のその話に応えてきた。
「俺いつも作ってるんだよ」
「それでか」
「だから料理には自信があるんだよ」
それでだというのだ。
「まあたっぷりあるからな」
「ですね。この量は凄いですね」
上城もだ。当然食べている。その中でも言葉だった。
「どれだけあるんですか?」
「茹でられるだけ茹でたからな」
「ソースもですよね」
「ああ、できるだけ作った」
そうしたというのだ。
「多分パスタは一人あたり六〇〇グラムはあるな」
「六〇〇って」
「かなりですけれど」
「頑張って食ってくれ」
中田は驚く上城と樹里にだ。素っ気無く述べもした。
「味は悪くない筈だからな」
「確かに美味しいことは美味しいですけれど」
「これだけの量は」
確かに樹里は苦戦しかけていた。しかし上城はだ。
そのパスタをどんどんとだ。胃の中に入れていた。勢いは落ちていない。そんな彼を見てだ。樹里は驚く目をしつつ彼に対して言うのだった。
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