第十二話 一人ではないその一
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久遠の神話
第十二話 一人ではない
中田の家に向かいながらだ。上城は共にいる樹里にこう話した。
「何かね」
「そうよね。まさかこうなるなんてね」
「思わなかったよね」
「上城君だけじゃなくて私もなんて」
樹里もだ。俯き気味になって考える顔になって言う。
「中田さんのお家に行くなんて」
「場所は銀月さんに教えてもらったけれど」
「それでもよね」
「中田さんと僕は仮にも敵同士になるけれど」
剣士同士だからだ。それは否定できなかった。
だが、だ。中田はだというのだ。その彼は。
「どうしてお家に呼んで」
「御馳走してくれるのかしら」
「ワインもあるんだって?」
「ええ。そう聞いてるわ」
「本当にいいのかな」
上城は中田のその誘いについてだ。いぶかしむ顔に話し続ける。
「僕達が一緒に行って」
「中田さん何を考えてるのかしら」
「それもわからないよね」
「ええ。悪い人じゃないことはわかってるけれど」
それでもだとだ。二人で話してだ。夜道を歩いていく。
夜の住宅地は丁度帰宅時間らしくだ。サラリーマンやOLと思われる人達が行き来している。その人達を見てだ。上城はふとこんなことを言った。
「僕もね」
「上城君も?」
「うん。大学を卒業したらやっぱり」
「就職してよね」
「何かと大変だろうけれどね」
就職も難しいがだ。そこからさらにだというのだ。
「まあ八条学園の卒業生って大抵はだよね」
「ええ。八条グループに入るわ」
「じゃあ八条グループの何処かに入って」
「それでこうして帰宅時間に帰って」
「そうなるのかな」
先のこともだ。ふと考えたのである。
「やっぱり」
「そうなるのかしら。私も」
「多分ね。OL?」
「ううん、学校の先生になりたいの」
これが樹里の夢だった。
「小学校のね。それか」
「それか?」
「保育園の先生にね」
なりたいとだ。樹里は上城に話す。
「そうなりたいけれど」
「先生になんだ」
「子供達に教えたいから」
だからだというのだ。
「それで先生になりたいなって」
「ふうん、子供にね」
「そうなの。駄目かしら」
「いいと思うよ」
微笑んでだ。上城はこう樹里に答えた。
「そういうって素晴らしい仕事だよね」
「いい仕事よね、本当に」
「子供達あってだからね」
社会の全てはそこからだという意味での言葉だ。
「だからね」
「そうよね。子供って大事よね」
「その子供達を教えられるのって素晴らしいよ」
「立派な先生になりたいわ」
樹里は顔を上げてだ。未来を見ながら言った。
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