第四十七話 伊勢併呑その十四
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その石川がだ。主にこう言うのだった。
「家を入れられてはどうでしょうか」
「家をか」
「はい、元に代わって家です」
そこを変えてはどうかというのだ。
「それでどうでしょうか」
「では家康じゃな」
「そうなります」
「ふむ。徳川の家を康んじるじゃな」
元康は考える顔で石川の言葉を反芻して述べた。
「そうなるのう」
「そうです。これでどうでしょうか」
「悪くない。いや」
「いや?」
「むしろかなりよい」
こうだ。石川の言葉を受け入れて言うのだった。
「ではそれでじゃ」
「いかれますか」
「徳川の家になればすぐに変える」
下の名前もだ。そうするというのだ。
「わしは徳川家康になろうぞ」
「してこの三河の国をですな」
「治められますな」
「三河に遠江の半分、合わせて五十万石じゃ」
大名としては上の方である。五十万石ともなればだ。流石に武田や急激に大きくなった織田と比べればかなり落ちるがそれでもだ。
その五十万石としてだ。元康は言うのだった。
「わしもこれからじゃ」
「五十万石で終わりではなく」
「さらにですな」
「石高で大きくなれずとも別のことで大きくなろうぞ」
つまりだ。力だけではないというのだ。
「これまで低く見られていた我等が天下にじゃ」
「その名を轟かせる」
「そうされますね」
「そうするぞ。よいな」
「はい、それでは」
「そうなりましょうぞ」
松平の家臣達も笑顔で応え。そうしてだった。
彼等は一つにまとまる。その中心にいる元康がまた話す。
「御主等と共にいればできるな」
「天下に名を轟かせることがですか」
「できますか」
「できる。例えどんな状況でもじゃ」
どうするか。具体的な話にもなる。
「背を見せず。三河の武辺を見せようぞ」
「天下に思う存分ですな」
「見せるとしますか」
そうした話をしてだった。彼等もだ。
松平から徳川になりだ。大きく羽ばたこうとしていた。雄飛するのは信長だけではなかった。ここにもう一人だ。その者がいたのである。
第四十七話 完
2011・6・26
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