第十一話 意外な素顔その七
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だがそれでもだった。彼女はこうも言ったのである。
「ですがそれでも」
「戦いは見るのかい?」
「そうさせてもらいます」
こう広瀬に告げたのであった。彼を見つつ。
「私は」
「何を見ても知らないとだけ言っておく」
広瀬はその聡美にこう話した。
「戦いで誰かが死ぬだけじゃないからな」
「それ以外にもですね」
「そうだ。戦いは色々なものを浮き上がらせるものだからな」
戦いについてはだ。広瀬はかなり否定的に述べた。
そしてその否定をだ。また言ったのである。
「心にある醜いものをな」
「それは貴方もですか?」
「俺は彼女と一緒になる為に戦い生き残る」
そして願いを適える。その為にだというのだ。
「その為には何だってするさ」
「戦いに勝つ為にはですね」
「醜いことだってする」
こうも言うのである。
「そうだからな」
「だからですか」
「これでわかったかな」
広瀬はここでも何処か達観した様に述べてみせる。
「わかったらできるだけ戦いには関わらないことだ」
「まあ俺もな」
中田もだ。ここで聡美に対して言うのだった。
「戦いを見るにしても傍にいるのはな」
「賛成ではないですか」
「危ないぜ」
彼が言うのはこのことだった。
「何時流れ弾みたいに火だの何なりが飛んで来るかわからないからな」
「そうですね」
それはわかっているとだ。聡美も返す。
だがそれでもだった。彼女は中田にそう言われてもだった。
確かな。既にわかっていて決意したといった顔でだ。中田と広瀬に告げたのである。
「ですが全て覚悟のうえです」
「強いね」
その言葉を聞いた中田の言葉である。
「どういう考えか知らないけれどそこまで覚悟してるなんてな」
「気にはなるな」
広瀬はその聡美の決意の目の色を見てだった。その緑の目を。
「君がそこまで考えて見る理由は」
「理由ですか」
「聞きはしない」
それはしないというのである。
「君には君の考えがあるだろうしな」
「有り難うございます」
「御礼もいい」
広瀬はそれもいいとした。
「御礼を言われる様なことはしていない」
「だからですか」
「それではな」
こう言ってだ。広瀬は厩舎の中に入ってだ。そうして二人と別れたのだ。
それからだ。中田はこう聡美に言った。
「とりあえずはな」
「これでよしですね」
「上等ってところだ」
彼はこう言ったのである。
「あいつの戦う理由がわかったしな」
「恋人の為ですか」
「戦う目的としちゃ妥当さ」
「人の目的としては。確かに」
「あんたもそう思うだろ」
「はい」
こくりと頷いてだ。聡美はその通りだと中田に答えた。
そうしてだ。彼女はこうも言った。
「それは人だけではな
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