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戦国異伝
第四十七話 伊勢併呑その十

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「ここまで見てどう思われるか」
「ううむ、一戦も交えずして伊勢を手に入れるとは」
「しかも血もまるで流れてはおらぬ」
「しかし伊勢も志摩も手に入れた」
「凄いことですな」
「しかもまた別の動きがあるようです」
「どうやら」
 ここでだ。さらになのだった。
「近江と三河にも人が向かっています」
「これは一体」
「ふむ」
 その話を聞いてだ。雪斎は。
 考える顔になりそれからだ。こう同僚達に話した。
「そのことが上手にいけばですな」
「その時ですか」
「我等も」
「決めるべきです。しかし」
 雪斎は感心する様にしてだ。言うのであった。
「織田殿、これはまことに」
「外の政もですか」
「まことに秀でていると」
「内だけではなく」
「そのどちらも秀でておるようですな」
 そうだというのだ。信長はだ。
「いや、伊勢でもです」
「あの広く多くの国人に分かれている伊勢を戦一つせず手中に収めておりますから」
「あれは安芸の毛利殿に倣ったのでしょうか」
「そうなのでしょうか」
「そうなのでしょうな」
 おそらくそうだとだ。雪斎も言う。
「ただ。あの様に手段を選ばぬというものではないようです」
「毛利殿はどうもですか」
「謀ごとがあまりにもえげつないようです」
「暗殺を得手とし」
「主に家臣を殺させることもしております」
「とにかく手段を選ばぬ御仁です」
 毛利元就の天下での評価はこうしたものもあるのだ。確かに彼は一代にして大きな勢力を築いている。しかも無駄な血を流さずにだ。
 だがその手段を選ばぬ謀ごとはだ。快く思われていないのだ。
 そしてそのことはだ。雪斎も同じなのだった。
「拙僧もあそこまでは」
「できませんな」
「とても」
「あれが出来るのは毛利殿だけです」
 そのだ。元就だけだというのだ。
「敵に回ると恐ろしいものがありますな」
「しかし織田殿はそこまではされなかった」
「国人達を取り込み養子を送って己の配下とした」
「それだけですな」
「左様、これはよいことです」
 信長のそうしたことを素直に認めるのだった。
「これだけでかなりのものです」
「しかしさらにですか」
「見るのですな」
「そうです。これではまだ美濃を制するには決め手になっておりません」
 政においてだというのだ。戦で全てを決める前に政がある。その政をどれだけ整えているのか。要はそこであった。
 それを言ってだ。雪斎はさらにだった。
「もう二つ必要なのでござる」
「それは近江と三河」
「その二国ですか」
「それで整えれば尾張は無事美濃を攻められます」
「そこまで整えれば勝てますか」
「斉藤に」
「確実に勝てます」
 それはだ。大丈夫だというのだ。雪斎も太鼓判を押す。
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