第四十七話 伊勢併呑その五
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「じゃがわしはあそこまではせぬしまたせんで済んだ」
「それが今の伊勢と志摩ですな」
「そうじゃ。これでよい」
こう言うのである。
「して最後はじゃ」
「北畠」
「あの家ですな」
「左様。伊勢守護は最後の最後で取り込む」
そうするとだ。信長は武井に話すのだった。
「そしてそれは新五郎に任せよう」
「それは宜しいかと」
「いいというのじゃな」
「はい、新五郎殿ならです」
武井も林の力量はわかっている。彼は戦よりも政の者でだ。そうした取り込みもまた得意としているのだ。だからこそ頷くのだった。
「必ずやです」
「やってくれるな」
「そう思います」
「では。次は新五郎じゃ」
あらためて言う信長だった。
「そうするぞ」
「では。御呼びします」
「そして御主はすぐに神戸の家に向かえ」
「わかりました」
そうした話をしてだった。武井は林を呼ぶと共に神戸の家に向かった。
すぐにだ。林が来てだった。信長に言うのだった。
「では今より」
「察しておるか」
「そう思っておりました」
彼もだ。読んでいたというのだ。
「ですから」
「流石じゃ。それではじゃ」
「はい、今より」
「送り込むのは茶筅じゃ」
「茶船丸様をですか」
「それでよいと思うが」
そう問われるとだ。林は少し考える顔になって言うのだった。
「では長野家は信包様ですね」
「そうじゃ」
「そして神戸の家は」
「わかるな」
「三七様ですな」
「うむ。全てわかっておるならじゃ」
信長も満足してだ。そのうえでだった。
林も向かわせる。そうしてから暫くしてだ。
三つの朗報が入って来た。それは。
「うむ。上手くいったな」
「はい、伊勢も志摩もです」
「我等のものになりました」
こうだ。家臣達が信長に述べていた。
「一度の戦もせずです」
「それを果たすことができました」
「狙い通りじゃな」
そのことにだ。満足した面持ちで応えて言う信長だった。
その彼にだ。島田が言ってきた。
「ですが。長島だけはです」
「あそこか」
「はい、あそこはそのままです」
残っているというのである。
「本願寺の勢力がそのまま残っています」
「仕方ないのう」
信長もだ。そのことについてはだ。
諦める様な声でだ。こう言うのだった。
「本願寺だけはどうにもならんわ」
「ここで下手に手を出してもです」
「厄介なことになるからのう」
信長は袖の中で腕を組みだ。考える顔で述べた。
「それこそ朝倉と同じじゃ」
「はい、一向一揆が敵になります」
「あの者達が」
「相手にすると厄介じゃ」
信長は今度は難しい顔になって言うのだった。
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