第四十七話 伊勢併呑その四
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信長はさらにだ。こう話してきた。
「これであの三つの家の周りがかなり埋まったな」
「そうですな。長野に神戸、そして北畠」
「その三つが」
「まずは長野じゃ」
その家をだ。どうするかというのだ。
「そうじゃな。ここはじゃ」
「ここは」
「どうされますか」
「吉兵衛を呼べ」
村井をだというのだ。
「あの者に話す」
「はい、それでは」
「今から」
長野と佐久間信直は信長の言葉を受けて下がってだ。そのうえでだった。
村井を呼んできた。今度は村井が信長の前に来たのだ。
その彼にだ。信長はすぐに告げた。
「長野家に行くのじゃ」
「はい、そうしてですか」
「三十郎を入れる」
「信包様を」
信長の弟の一人だ。彼の弟は信行や信広だけではないのだ。二人の他にもだ。実に多くの弟や妹達がいるのだ。信長は彼等の長兄でもあるのだ。
その弟の一人をだ。長野家に入れるというのだ。
「幸い長野家には跡継ぎがおらんしな」
「それは神戸や北畠もですね」
「あの家も」
「もっとも跡継ぎがおっても無理に入れておる」
この辺りは戦国ならではだ。強引にしてもというのだ。
「だが。跡継ぎがおらんからにはじゃ」
「話は容易ですな」
「あちらも既に揺らいでおるわ」
心がという意味の言葉だ。伊勢及び志摩は小さな国人達が次々と信長の下に入り三つの家を囲んできているのだ。そうなればなのだ。
「ではじゃ」
「ここで跡継ぎの話をすれば」
「すぐじゃ。時は来た」
「それでは。今より」
「向こうも断らぬ。しかし油断することなく果たすのじゃ」
「わかっておりまする」
村井は一礼してからだ。すぐにその伊勢の長野氏のところに向かうのだった。そして彼が帰るとだ。吉報も共に来たのだった。
長野氏は信長の弟である信包を家に入れ跡継ぎにすることを受け入れた。伊勢の大家のうちの一つがこれで織田に下った。
信長はそれを受けてだ。今度はだ。
武井を呼びだ。こう命じるのだった。
「今度は神戸じゃ」
「あの家もまたですか」
「そうじゃ。養子としてじゃ」
「今度はどなたを」
「三七じゃ」
この名を出すのだった。信長の三男だ。信長はまだ若いが既に何人か子がいるのだ。この時代においてはこのこともまた普通のことだ。
「あれを入れよう」
「では最後の北畠には」
「ははは、わかるか」
武井の言葉に笑う。そうしての言葉だった。
「そうじゃ。茶筅丸じゃ」
「あの方をですか」
「これで伊勢はあらかたわしのものとなる」
その三つの家を組み入れてだ。そうなるというのだ。
「言ったな。一度も戦をすることなく伊勢を手に入れるとな」
「はい、確かに」
「それが今実際のものとなるのじゃ」
「まさかと思いました」
織田家
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