第四十七話 伊勢併呑その三
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「そして伊勢じゃ」
「あの国ですな」
「果たしてどうするか」
「伊勢だけで足りぬか」
まだあるというのだ。雪斎はさらに話す。
「もう一つか二つあれば決めてもよいか」
「一つか二つですか」
「織田殿のその器量を確めると」
「そうじゃ。まず内はよい」
尾張の国のことだ。それはいいというのだ。
「このことはもうおのおの方も見ておられると思うが」
「確かに。尾張の政はまことによいものです」
「国は豊かで民は安穏と暮らしておりまする」
「兵達もまた」
その兵達の話も為される。所謂足軽達だ。
「まさか兵と百姓を分け何時でも戦ができるようにするとは」
「そして鎧兜もよいものですし」
織田の兵達の弱さについてはあえて言わないのだった。兵の弱さにおいては今川もかなりのものだったからだ。少なくとも武田や上杉とは比較にならない。
そのことはあえて言わずにだ。さらに話していく彼等だった。
「政はとにかくよい」
「それだけを見てもうつけ殿ではない」
「それは確かです」
うつけかどうかはその国の政を見ればわかる、そういうことだった。
「しかしそれだけではなく」
「外にはどうなのか」
「それですな」
「そうじゃ。それを見たい」
雪斎は真剣な目であった。その目での言葉なのだ。
「今は内を治めているだけでは駄目じゃ」
「国を外に拡げることも大事故」
「それ故にですね」
「ましてじゃ」
さらにだとだ。雪斎は付け加えるのだった。
「織田殿は天下を目指されておる」
「それならば余計にですな」
「外も肝心になる」
「そうなりますか」
「そういうことじゃ。さて」
ここまで話してだ。雪斎はその言葉を一旦区切った。
そしてそのうえでだ。こう言うのである。
「見させてもらおう」
「織田殿の器」
「じっくりと」
こうして彼等は信長の動きを見るのだった。見れば伊勢の国人達はだ。
次から次に信長の下に参じている。そうなっていた。
その中でだ。信長は清洲城の庭において二人の家臣と話していた。一人は佐久間によく似た彼よりはやや年配の男だ。彼の弟で佐久間信直という。
もう一人は四角い顔の力士の様な男だ。こちらは水野帯刀という。
信長はだ。その彼等の話を聞いていた。
「ふむ。また二つじゃな」
「はい、国人の家をです」
「我等それぞれ引き込めました」
「見事じゃ」
その話を聞いてだ。信長は満足している顔で頷いた。
そのうえでだ。彼等の名を呼ぶのだった。
「左京」
「はい」
まずは佐久間の弟だった。
「左衛門」
「はい」
次は水野だった。彼等の名前を呼んでだ。
そのうえでだ。こう彼等に言うのであった。
「後で褒美を与える。楽しみにしておれ」
「有り難き御言葉
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