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戦国異伝
第四十七話 伊勢併呑その一

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                  第四十七話  伊勢併呑
 信長の前にだ。雪斎がいた。その彼が信長に対して言うのである。
「殿はです」
「出家するというのか」
「はい、そうされるとのことです」
 このことをだ。信長に話すのである。
「そのことをお伝えに参りました」
「左様か」
「そして。我等は」
 見れば彼の後ろには今川の家臣達が揃っている。いないのは嫡男の氏真だけだ。彼は既に元康を頼って三河に落ち延びているのだ。
 その雪斎が今川の者達を代表してだ。信長に言うのだった。
「殿に言われました」
「何とじゃ?」
「織田殿を見極めよと」
 このことをだ。あえてそのまま言うのだった。
「殿はそう仰いました」
「左様か」
「そうです。そしてです」
「見極めてからだというのじゃな」 
 信長は話の先を読んだ。そのうえで話すのだった。
「御主等の身の振り方をじゃな」
「その通りです。そのこともです」
「わかった。では見るのじゃ」
 信長は鷹揚に笑って雪斎に返した。
「わしも隠さぬ」
「隠されませんか」
「うむ、隠さぬ」
 その鷹揚な笑顔での言葉だ。
「最初から隠すつもりはない」
「では。我等もです」
「見るか。それではな」
 こうした話をしたのだった。実際に雪斎は信長を見るのだった。
 信長の一挙手一投足を見ていた。その中でだ。
 彼等はだ。こう信長について話す。
「あまり寝てはおられぬな」
「しかも始終身体を動かしておられるか書を読まれるか遊ばれるか」
「政をしておられる」
「かといって休まれぬ訳でもない」
 身体を休めることもしているというのだ。
「よく横になってうとうととされておられる」
「そして茶をよく飲まれるな」
「ですな。それもかなり」
「とにかく茶がお好きです」
「確かにのう」
 彼等の中にいる雪斎もだ。その通りだというのだった。
 そして彼はだ。信長についてこんなことも話した。
「茶はよく飲まれるがじゃ」
「茶を」
「しかしと言われますか」
「うむ。あの方は酒は飲まれぬな」
 彼が今言うのはこのことだった。
「それも全くじゃ」
「そういえば酒を飲まれるとは聞いていませんな」
「酒のことは一切話にも出ない」
「甘いものを好まれるが酒はありませぬな」
「それも全く」
「乱れられることはないか」
 酒乱の気はだ。信長にはないというのだ。
「ただ。舞やそういったものはお好きな様じゃな」
「とりわけ相撲ですな」
「御自身もよくやられているし」
「それがお好きな様ですな」
「それと鷹狩りに馬に水練」
 そういったものも挙げられていく。
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