第四十六話 寿桂尼その十二
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
れだとだ。主に話す。
「あの御仁も殿に見たのでしょう」
「わしにか」
「確かに殿はいい加減というか何を考えておられるかわかりませぬ」
信長の奇矯なところをだ。佐久間は指摘するのだ。
「しかしそれがです」
「それがか」
「大きなことになっているのです」
「まあわしは興味のあることは何でも己で身に着ける」
これは馬にしろ水練にしろ鉄砲にしろ兵学にしろだ。ひいては舞や古典に関してもだ。信長はとにかく興味のあるものは己で身に着けないと気が済まない性分なのだ。
そのことも己でわかっている。彼は今このことを言うのだった。
「それはあるが」
「それです」
「これがか」
「それは確かに突拍子もないことです」
何でも興味のあるものは身に着ける。確かにそれは突拍子もない。しかしそれで培われるもの、佐久間はそれを言うのである。
「ですが何でも身に着けられるからです」
「わしは大きくなるか」
「その殿だからこそ」
それでだという佐久間だった。
「我等も仕えておるのです」
「左様か。あの老人もか」
ここで何気なく平手を見る。彼のことはこう言う。
「尾張の年寄りは格別口喧しいが越前の年寄りもそうなのかのう」
「殿、何を言われますか」
早速だ。平手は小言で返した。
「その様ないい加減なことではです。何時どうなるか」
「わかったわかった、やはり爺の小言は天下一じゃ」
苦笑いでその平手に応える信長だった。いつもの流れになる。
「全く。おなごや若いおのこだけでなく年寄りにも好かれるのか」
「殿、おふざけも大概にです」
「わかっておるわ」
こうして平手の小言から何とか逃れようとするのだった。そうした話の中でだ。彼は伊勢、志摩への動きを確かにしていくのだった。
第四十六話 完
2011・6・18
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ