第四十六話 寿桂尼その五
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「そのどれもがわしの力になってくれるからのう」
「それがしだけではなくですか」
「それもまた有り難い。それではじゃ」
「この度のことも」
「力を貸してもらうぞ」
「はい、それでは」
信行は一礼して信長の言葉に応えた。そうした話をしてだった。
彼等は茶を飲んだ。茶室で行われるべきそれに戻ったのだ。そしてそれから数日後。清洲の城内において。
信長は寿桂尼と会った。信長は平手を、寿桂尼は雪斎をそれぞれ傍に置いてだ。そのうえで互いに対して会談をはじめるのだった。
まずはだ。寿桂尼からだった。信長に対して手をついて一礼する。信長もその礼に応える。そのやり取りが終わってからだ。こう述べるのだった。
「まずはです」
「うむ」
「義元殿、氏真殿のことです」
毅然として信長を見据えての言葉である。少なくとも彼女は敗者ではない。
「有り難うございます」
「礼を述べられるか」
「その御命を今もお救い下されていることにです」
礼を述べたというのである。
「そういうことです」
「左様でござるか」
「そしてです」
礼を述べてから。さらにだった。
「その義元殿と氏真殿ですが」
「安心されよ」
信長も寿桂尼と対してだ。正面から言うのだった。
「その命を取るつもりはない」
「そう仰るのですね」
「捕らえて首を刎ねるのならその場でそうしておる」
だから。今はだというのだ。
「それをするつもりはない」
「わかりました。それでは」
「して」
義元と氏真の安全を確かだとしてだ。それからだった。
信長の方からだ。こう話すのであった。
「貴殿のことだが」
「私ですか」
「ここに御呼びしたのは他でもない」
信長の方から話すのはそのままだ。彼が話し寿桂尼が受ける。そうした流れになっていた。
そしてそのうえでだ。信長が寿桂尼に話すことは。
「尾張に寺を用意してある」
「寺ですか」
「そこで暮らされるがいい」
こう話すのである。
「貴殿さえよければ」
「私を人質に取られるというのですね」
あえてだ。言いにくいこのことをだ。信長に言ってみせるのだった。
「左様ですね」
「そう思われるか」
「違うというのでしょうか」
「そう思われるなら結構」
そしてだ。信長もだった。寿桂尼のそのあえて言ってみせた言葉を正面から受けそのうえでだ。これまた正面から返したのだった。
「しかし」
「しかしですか」
「貴殿がここにいようと」
尾張にだ。彼の国にだというのだ。
「そして他の国に行かれるのもまた」
「いいというのですね」
「貴殿の好きにされよ」
「左様ですか」
「しかし」
だが、だとだ。信長はここで毅然として寿桂尼に話してきた。
「だからといって義元殿、氏真殿に何かを
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