第四十五話 幸村先陣その十一
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雪斎はだ。こう彼女に話すのだった。
「いえ、織田でしょう」
「織田殿ですか」
「ただ我等を破っただけではない」
「そうなのです。おそらくですが」
「おそらく？」
「尾張に留まらずです」
一国にだ。終わらないというのだ。さすればだった。
「多くの国を手に入れていくでしょう」
「尾張以外に」
「そしてその全ての国を見事に治めるでしょう」
「政にも長けているというのですか」
「それは尾張に入れば見ることになるでしょう」
彼等は今遠江を西に進んでいく。そしてだった。
さらに三河に入ろうとしている。その中で話すのだった。
「尾張と。織田信長という者をです」
「さすれば」
「その全てを見ましょう」
こうした話をしてだ。彼等はだ。
尾張に向かうのだった。国を失くしてしまったがだ。彼等は尾張に向かいだ。彼等の戦いに入ろうとしていた。今川の為の戦いにだ。
その頃その尾張ではだ。信長は。
清洲の城において茶器を見ながらだ。池田にこんなことを話していた。
「見事じゃな」
「その茶器がですか」
「うむ。よい茶器じゃ」
満足した顔でだ。彼は池田に話す。
「これは何処の茶器じゃったかな」
「瀬戸です」
そこだとだ。池田は話した。
「瀬戸で焼かれた茶器です」
「瀬戸、そうかあそこか」
尾張にある。信長は尾張の地のことは全て頭の中に入れている。それでだ。瀬戸の場所もすぐに把握してだ。池田にまた話すのだった。
「ではじゃ」
「どうされますか、一体」
「瀬戸の者達に伝えよ」
こう話すのだった。
「こうした茶器を次々と作れとな」
「これまで以上にですか」
「そうじゃ。田畑を耕し町を整える」
信長が常に進めていることだ。彼はまず政をする男なのだ。
「堤や道を築くことや特産品を作らせる以外にもじゃ」
「そうした茶器もですか」
「あと刀に槍もじゃ」
戦のこともだ。信長は忘れていなかった。
「やがて国友やそういった場所も手に入れじゃ」
「鉄砲もですか」
「造るぞ。しかしまずはじゃ」
「そうした茶器をですか」
「そうよ。茶器は売れる。売れてじゃ」
「国を富ましますな」
「だからじゃ。どんどん造らせよ」
また話すのだった。
「必ずじゃ。豊かになるぞ」
「わかりました。さすれば」
こうしてだった。今度は茶器であった。信長はそうしたものでも国を富まそうとしていた。彼の関心はあらゆるものに向けられていたのだ。
その中でだ。また話す彼だった。
「別に酒を入れるものを造ってもよい」
「茶器だけではありませんか」
「酒は飲めぬが他の者がどれだけ飲んでもよい」
こうだ。笑って話すのだった。
「好きなだけじゃ」
「だからですか」
「そうじゃ。茶も酒もじゃ」
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