第四十五話 幸村先陣その四
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「越後の直江兼続、そして尾張の前田慶次」
「直江殿と。あの天衣無縫の傾奇者でございますか」
「前田慶次のことは聞いておろう」
「はい、槍を手に縦横に暴れしかも風流を解するとか」
「そして尾張一の悪戯者でもある」
笑いながらだ。高坂は話した。
「それと出雲の山中鹿ノ介か。九州には立花宗茂という者もおるそうだな」
「五人ですか」
「御主はその五人の中に入っておる」
「そうであればいいのですが」
「無論ここに入ってそれで天狗になるようでは天下一の侍にはなれぬ」
「それがし。天狗は好きではありませぬ」
そのことは真面目に返す幸村だった。この辺り彼は実に生真面目だ。
その生真面目さでだ。彼は言うのだった。
「ですから」
「ははは、天狗は嫌いか」
「上には上がおるものです」
ここでも生真面目に言う幸村だった。
「己の力に胡坐をかくなぞもっての他でございます」
「そうだな。その通りだ」
「それがし。あくまで己を磨き」
「より高みを目指すか」
「御館様が天下を取られるなら」
それならばというのだ。何処までも生真面目な幸村である。
「それがしはその御館様の手足となりましょう」
「十勇士といったな」
幸村の言葉をここまで聞いたうえで、である。
高坂は微笑んでだ。彼にこう告げたのであった。
「主を見る目は確かなようだな」
「それがしを主に選んだことが」
「左様。御館様が天下を治められ」
「御主はその御館様の手足となるか」
「そうして天下を安楽にしたいと思っております」
「その意気だ。御主は常に上を目指せ」
幸村のその澄み切った目を見て告げるのである。
「天下一の侍を目指すのだ」
「ではその為にも」
「先陣よ。駿河攻めの先陣見事に果たすのだ」
「はい、そうします」
幸村の言葉は何処までも毅然としていた。その声でだ。
彼は天下を目指すと話すのだった。その目指すものはあくまで遠いがそれでもだった。彼は今高坂に、そして天下に誓ったのだった。
程なくして駿河攻めの兵が集められ出陣となった。先陣はやはり幸村である。
武田の赤い鎧兜、そして真田の六文銭の旗もあるその中で赤い馬に乗った彼に対して。彼の周りに控える十勇士達が話すのだった。
「では殿、今からです」
「戦ですな」
「まさか殿が先陣を務められるとは」
「我等も感激でござる」
「よいか」
幸村は感激しているその十勇士達に話す。
「我等の敵は鎧兜に身を包み刀や弓矢を持つ者達ぞ」
「民には刃を向けぬ」
「そうですな」
「そして奪わぬ」
それもしないというのだ。
「卑怯未練なことはするな。それはわしが決して許さぬ」
「わかっております。我等もです」
「これから天下に名を残す十勇士です」
「それならば
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