第零話 炎の覚醒その十三
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「で、その人ってこの町にいるんだ」
「それはわかっています」
「その娘の家は」
「部屋はあります」
聡美は既に部屋という言葉も知っていることが今の言葉でわかった。
「そこにいる筈なのですが」
「それでもなんだ」
「何時行ってもいません」
「放浪癖あるんだね」
「そうです。簡単に言うと」
「厄介だね。っていうかその娘もやっぱりうちの学校の生徒さんだよね」
部屋と聞いてだ。中田はこう考えて問うた。
「そうだよね」
「そうです。それも私と同じです」
「それで大学に通ってなくて」
「することがありますから」
聡美は不意にだ。こんなことも言った。
「ですから」
「することって?」
そしてだ。中田もだ。こう彼女に問い返した。
「何それ」
「あっ、それは」
「どうも訳ありな娘みたいだけれど」
「何でもありません」
言葉を打ち消した。慌てた動作でだ。
「気にしないで下さい」
「そうなんだ」
「はい、それで」
「それで?」
「中田さんは剣道をやってますね」
「そうだよ。これでも腕には自信があるからさ」
中田は剣道の話になると明るい笑顔になって話をはじめた。
「ボディーガードでも何でもできるよ」
「そうですか。そこまで」
「これでも負け知らずなんだぜ」
「そうそう、こいつ強いよ」
「動きも速いししかも二刀流でさ」
「相当なもんだから」
中田の周りにいる剣道部の面々が酒やピザを手に言ってきた。無論彼等も剣道部である。
「ただ。性格は軽いからさ」
「そこは注意してくれよ」
「結構いい加減だから」
「おいおい、それはないだろ」
仲間達の言葉に中田は困った顔になって言い返す。
「俺はこう見えても真面目だぜ」
「何処がだよ」
「何処が真面目なんだよ」
彼等は茶化すように笑ってだ。彼に言う。
「御前が真面目だったらそれこそだよ」
「世界中真面目な人間だらけだろ」
「いつも適当だからな」
「何をするにしても」
「俺は必要なこと以外には力を使わないんだよ」
ここでもこんなことを言う彼だった。
「セーブしてるんだよ、セーブ」
「手抜きはセーブって言わないだろ」
「ったく、何から何まで手を抜くんだからな」
「本当に大事な時以外は手を抜くからな」
「それをいい加減っていうんだよ」
彼等のこうした言葉を聞いてだ。聡美は笑わなかった。本来ならば笑う、それもくすりとした笑いになるところだがそれでもだ。彼女は笑わなかった。
真面目な顔で聞いてだ。こう言うのである。
「そうですか。そういう方もまた」
「また?」
「またって?」
「なるのですね」
聡美の言葉だ。
「そうなのですね」
「なるって?」
「一体何に?」
「あっ、何でもないです」
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