暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第四十五話 幸村先陣その一
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

                第四十五話  幸村先陣
 武田はだ。早速であった。
 桶狭間での今川の敗戦により駿河に主がいなくなったと聞いてだ。すぐにであった。
 家臣達を集めてだ。こう言うのであった。
「それでは駿河にじゃ」
「出陣ですな」
「今より」
「その通りじゃ」
 まさにだ。それをするというのであった。
 それを告げてだ。まずは己のすぐ傍にいる嫡男の義信に問うのであった。
「若し今川家があれば御主も不快に思ったであろう」
「はい」
 その通りだとだ。義信は答えた。父に似ているが細面のだ。爽やかな顔の青年である。その彼が父の問いに毅然として答えたのだ。
「それはその通りです」
「そうであろうな。しかしじゃ」
「今駿河には今川家はありませぬ」 
 自身の妻の実家がだ。最早ないというのだ。それであれば義信としてもだ。駿河に入ることに何の気兼ねもなかった。むしろだった。
「父上、残された今川家の者達をです」
「そうじゃ。助けねばならん」
 安易にだ。大義名分もできたのだった。
「だからこそじゃ」
「是非共駿河に」
「上杉への備えは海津に置いておく」
 信玄は伝えた。やはり上杉謙信のことは忘れてはいなかった。
 そしてだもう一つの相手についても話すのだった。
「して美濃じゃが」
「殿、その美濃ですが」
 山本がすぐに彼に言ってきた。
「状況が変わりました」
「何かあったか」
「主の斉藤義龍が病に伏せっております」
「ふむ。あの男がか」
「はい、どうやら重い病の様で」
 こう主に話す山本だった。
「最早長くはないかと」
「そうか。最早か」
「はい。その子の義興はどうやら父程の器はない様です」
 山本はこのことも話した。
「確かに兵は多いですが信濃に攻め入ることはないかと」
「では最低限の備えでよいな」
「はい、そう思います」
 これが山本の読みであった。
「ですから今はです」
「駿河、そして遠江じゃな」
「そして上野です」
 山本はこの国も話に出した。
「駿河の次はです」
「無理はせぬ」
 慎重な信玄らしい言葉も出た。
「まる駿河は全て手に入れる」
「あの国はですか」
「そうされますか」
「しかし遠江は半分でよい」
 信長や元康の読み通りの言葉だった。
「半分でじゃ」
「半分で宜しいのですか」
「遠江は」
「何度も言うが無理はせぬ」
 だからだというのだ。
「その後の政の方が大事じゃ」
「成程、だからですな」
「政を重んじる為に」
「流石は殿です」
「そういうことじゃ。わしは戦に勝ちじゃ」
 そしてだというのだ。信玄の真の関心はそこにあった。
「その国を治めることこそがじゃ」
「天下を治めること」
「そうですな」
「天下
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ