暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第零話 炎の覚醒その十二

[8]前話 [2]次話

 その彼にだ。聡美はこんなことを言った。
「あの」
「うん、何かな」
「これからです」
「これから?」
「何があっても絶望しませんか?」
 こう彼に問うてきたのである。彼のその目を見ながら。
「中田さんは。何があっても」
「ああ、絶望ね」
 今度も笑いながらだ。そうして返す中田だった。
「俺ってそういうのとはさ」
「縁がないんですね」
「うん、ないんだ」
 陽気そのものの声での返事だった。
「全然さ」
「じゃあ何があっても」
「そういうのはないよ」
 また答える彼だった。
「何時でも明るくユーモアが俺の信条なんだよ」
「明るくですか」
「くよくよしたって仕方ないじゃない」
「そうですね。本当に」
「だからそれはないから」
 こう聡美に話すのである。
「安心してよ」
「わかりました」
「で、銀月さんはどうなの?」
 中田は聡美にそのまま話を切り返した。
「絶望したことっていうか。そんなことは」
「気にしていることはあります」
 俯いた顔になってだ。聡美は言ってきた。
「ずっと」
「ずっと?」
「友人のことで」
 そのだ。友人のことでだというのだ。
「私の姉の様な存在の。友人のことで」
「ふうん、そのお友達のことで」
「はい、気にしています」
 そうだとだ。中田に話すのである。
「そのことがどうしても」
「友達思いなんだね」
「大切ですから」
 だからだというのである。
「それで」
「で、その人って今どうしてるのかな」
 中田は自然に聡美に尋ねた。
「日本にいるのかな」
「はい」
 聡美は中田の今の問いに小さくこくりと頷いて答えた。
「います」
「そう、この国に」
「ただ」
「ただ?」
「日本の何処にいるのかは」
 それがだ。よくわからないというのだ。
「そこまでは」
「?それってやばくない?」
 中田は聡美の話、彼女の国籍も踏まえて考えてだ。怪訝な顔で述べた。
「その娘。女の子だよね」
「そうです」
「女の子で。留学生なのかな」
「そうなります」
「留学生の娘が住所不定って」
「この町にいるのは間違いないですが」
 聡美はこうも話す。
「八条町ですね」
「うん、八条町だよ」
 町の話にもなった。彼等が今いるのはその町なのだ。兵庫県の神戸市にある。そこに八条大学もありだ。そうして通っているのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ