第八話 二人の剣士その六
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ここでだ。上城はこう彼に返した。
「いえ、僕は黄金の棒を数本貰って」
「後はかよ」
「中田さんにお渡しします」
そうするというのだ。彼は。
「お金は別に」
「欲がないんだな」
「欲というか。お金も」
「必要ないってのか」
「特に必要ないです」
欲のないことをだ。ここでも見せての言葉だった。
「ですから」
「わかったぜ。それじゃあな」
「残りは中田さんが」
「ああ、俺にとって金はな」
それはだ。まさにだった。
「命だからな」
「命ですか」
「とにかく絶対に必要なんだよ」
ただしだ。何故必要なのかは言わない彼だった。
「今はな」
「ですから」
「無欲は最大の欲ってな」
ここでだ。不意にだった。中田は。
こんなこともだ。上城に言った。
「そこんところは覚えておくといいかもな」
「無欲はですか」
「ああ、まあ俺が思うにはな」
「はい」
「無欲な奴ってのは小さなことに無欲なんだよ」
「小さなことですか」
「金とか権力とかな」
具体的にだ。人間が向けるそうした欲について話してからだった。
さらにだ。こう話す彼だった。
「けれど。大きなことをしたいっていう欲はあるからな」
「大きなこと」
「例えば世界を変えたいとかな」
具体的にだ。中田は言った。
「凄まじく大きなものを作りたいとかな」
「そうした欲がですか」
「大きいものだよ。まあいいと思うぜ」
「いいんですか」
「それがいい欲ならな」
そうしたものならという中田だった。
「やりな。最後の最後までな」
「わかりました。それじゃあ」
「行くぜ」
「はい」
二人で頷き合いだ。そのうえでだ。
そのキマイラに向かう。剣を構えてだ。
それで怪物に向かおうとする。しかしだ。
ここでだ。その魔物の前にだ。あらたに二人出て来たのだった。
「んっ!?」
「あれは」
二人が見たのはだ。それぞれ剣を手にしている者達だった。
一人は警察の制服を着ていて。もう一人は。
上城はもう一人のその制服、黒と金のそれを見てだ。最初は何かよくわからなかった。それでだ。彼はこう中田に尋ねたのだった。
「あの制服の人ですけれど」
「黒と金色のか?」
「はい、あの制服は」
「何だろうな」
中田もだ。首を捻って言う。
「ありゃ何処の制服?」
「帽子に金色の帯が入っていて」
白と黒の帽子にだ。金色のそれが入っている。それは顎止めだが上城は遠目なのでよくは見えない。それで帯と言ったのである。
それを見てだ。二人は話すのだった。
「しかも袖のところに」
「太いのと細いのがな」
「一本ずつありますね」
そのだ。金色のだというのだ。
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