第五話 初陣その一
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第五話 初陣
尾張の状況はだ。大きく変わろうとしていた。
「今川だな」
「はい」
平手が主信秀の言葉に頷いていた。
「一度叩いておきましょう」
「そうだな。そしてだ」
「信長様ですか」
「頃合いだな」
こう平手に告げた。
「そう思うのだがな」
「確かに」
平手も主のその言葉に頷いてみせる。
「そう思います」
「ならばじゃ。伝えておけ」
信秀の言葉はすぐだった。
「このことをな」
「わかりました」
こうしてであった。平手は信長のいる那古屋に戻った。そうしてそのうえで主と居並ぶ家臣達に対してこのことを告げたのであった。
「ふむ、確かに」
「頃合いですな」
まずは柴田と林が頷いた。
「そろそろと思っていたが」
「絶好の機会ですな」
二人はそれぞれ言う。
「殿の初陣にはです」
「いい時です」
「他の者はどう思うか」
平手は二人以外の家臣達に問うた。
「殿の初陣。よしと思うか」
「望むところですな」
前田は大きく笑って述べた。
「一番槍はわしが果たしましょうぞ」
「いや、このわしが」
「それはわしぞ」
佐々と河尻も名乗り出る。彼等の意気は盛んであった。
そして主の信長はというとだ。まずはその座で静かに聞いていた。しかし家臣達は一通り話し終えてからだ。こう言ってみせたのである。
「では出陣じゃ」
「出られるのですね」
「相手は今川だな」
平手に対してこのことを問うた。
「そうであろう」
「はい、左様です」
平手もその通りだと答える。
「三河の安祥城の件以降尾張に迫る今川に対してです」
「そうであろうな。今は今川しかない」
信長は全てがわかったかの様な口調であった。
「我等が戦う相手はな」
「さすれば殿」
「ここは」
「皆も用意せい」
その家臣達にも告げた。
「全員じゃ。よいな」
「はい、それでは」
「今より」
「出陣は三日後とする」
その日まで告げた。
「先陣は権六、御主が務めよ」
「それがしがですか」
「そうじゃ、それに久助もじゃ」
滝川にも顔を向けて告げた。
「御主も先陣じゃ」
「それがしもまた」
「しかし御主は権六とはちと違う」
その滝川を見てからだ。さらに話した。
「そなたのやりたいようにせよ」
「それがしの」
「敵陣を荒らせ」
そうせよというのである。
「そして事前に敵のことを調べておけ。よいな」
「はっ、それでは」
「赤母衣、黒母衣の者はわしの傍におれ」
前田や中川といった面々を見ての言葉である。
「新五郎に牛助達もじゃ。じゃが五郎左はじゃ」
「はい」
ここで丹羽にだ。声をかけるとすぐに彼から言葉が返ってきた。
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