第四十四話 元康の決断その三
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「これだけのことをされるとは」
「城に帰ればじゃ」
その清洲にだというのだ。
「楽しみじゃな」
「祝いですな」
「それですな」
「祝うべきものは祝う」
佐久間盛重ははっきりと述べた。
「そうしなければ駄目じゃしな」
「殿はそうしたこともわかっておられますな」
「そうしたメリハリも」
「まことにな。では楽しみにしてじゃ」
そうしてだというのだった。
「清洲に戻ろうぞ」
「さて、その前にですな」
蜂須賀がここでこう言った。
「飯を食いますか」
「飯か」
「派手に戦いましたからな」
それでだと。豪快に笑いながら佐久間達に話すのだった。
「腹が減りました」
「では。全員で食うとしよう」
兵達もである。そうしてなのだった。
彼等は飯をたらふく食ってから清洲に帰るのだった。そうして城でだ。盛大に迎えられるのだった。
信長が桶狭間で鮮やかな勝利を収めたことは天下に知れ渡った。それは幕府でも同じでだ。細川と明智はそのことを話すのだった。
「思った以上ですな」
「そう思われますか」
「はい、織田殿が勝つだろうとは思っていました」
細川は腕を組んで明智に話す。二人は今二条城の一室にいる。そこで話をしているのだ。
「しかしです」
「あそこまでの勝ちはですか」
「流石に思ってはいませんでした」
そうだったというのだ。
「いや、あれだけ見事に勝たれるとは」
「私はです」
「十兵衛殿はどう思われていました」
「ああなると思っていました」
明智はその目の光を強くさせて答えた。
「織田殿は見事に勝たれると思っていました」
「そうだったのですか」
「地の利がありましたから」
戦う場所は織田の本拠地である尾張だ。このことはかなり大きいのは言うまでもない。
「それに今川殿は油断されていました」
「勝つと確信していたと」
「それが慢心になっていました」
明智が指摘するのはこのことだった。
「戦を先陣に任せ過ぎていましたし」
「雪斎殿とあの三河の」
「松平元康殿です」
明智はこの名前を出した。すぐにだ。
「確かに御二人はかなりの方ですが」
「その松平元康という者はそこまでなのですか」
「かなりの人物です」
その元康のことをだ。明智はかなり高く評価していた。そのうえでの話だった。
「あの三河武士の棟梁に相応しいだけの武辺者です」
「あの強い三河武士の」
「剣に馬に水練だけでなく兵法もです」
「全てに秀でていますか」
「それだけの人物です」
「ではその二人が先陣を務めていて」
それが為にだ。義元は二人に戦を任せていたというのだ。
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