第四十四話 元康の決断その二
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「縁があればまた会おうぞ」
「はい、それでは」
こうしてだった。雪斎と元康は別れたのだった。
元康は後詰を務めながら三河に戻る。そして雪斎はだ。
今川の兵をまとめてそのうえで駿河まで兵を戻していくのだった。こうして今川の者達は尾張から完全に姿を消したのであった。
それを見届けてからだ。佐久間盛重はこう周りの者達に話した。
「ではここは最低限の兵を置きだ」
「そしてそのうえで、ですな」
「我等はこれより」
「うむ、清洲に戻る」
こうだ。木下兄弟に話すのだった。
「これよりな」
「いや、無事生き延びましたな」
蜂須賀が笑って佐久間盛重に話した。
「あれだけの兵に囲まれながらも」
「殿が勝たれたわ」
満足している声だった。
「見事な」
「桶狭間ですな」
木下が明るく笑いながら話した。
「殿はあの場所で勝たれました」
「桶狭間か」
「おそらく今川はあの場所に陣を敷きました。本陣をです」
「そしてその本陣にか」
「はい、奇襲を仕掛けられたのです」
そうしたというのだ。木下は鷲津にいながらだ。そのことを察してみせたのだ。
そのうえでだ。彼は話すのだった。
「御見事です」
「うむ。まことにな」
佐久間盛重も木下のその言葉ニ頷いた。そうしてであった。
彼もまた満足した笑顔で話してだった。
「わしはてっきり篭城されると思っていた」
「清洲にですね」
「そこじゃ」
こう話すのだった。
「そう思っておったのだがのう」
「しかしあれでしたな」
蜂須賀は今はいささか真面目な顔で話した。
「奇襲とは」
「小六はどう思っておったのじゃ?」
木下が彼がどう思っていたのかを問うた。
「殿はどうされると思っておった」
「わしは決戦を挑まれると思っておった」
「平手殿の率いられる主力と合流してか」
「そう思っておったのだがのう」
「しかし殿は違っておられた」
木下秀長も言う。
「篭城でも決戦でもなく奇襲を執られた」
「それでよかったのじゃろうな」
木下は弟の言葉を受けて話した。
「兵も失わんし勝ち方も鮮やかじゃ」
「では殿はそうしたことも考えられて」
「織田の敵は今川だけではないからのう」
木下は弟に対してだ。考える顔を見せながら話した。
「斉藤もおるしのう」
「ここで兵を失うわけにはいかなかったのですか」
「そういうことじゃ。だからじゃな」
それでだというのだ。
「思いきったことをされたのじゃ」
「そしてそれをされるだけのものが備わっておられると」
「それが我等の殿じゃな」
「殿はどうやらじゃ」
佐久間盛重は退いていく今川の兵を見ながら話す。
「わし等が思っておった以上の方じゃな」
「そうですな」
木下は彼のその言葉に
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