第四十三話 清洲に帰りその十一
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そのことをだ。平手に話してであった。
「そうするからのう」
「それを聞いて安心しました」
「安心したか」
「それでこそ殿です」
そのだ。信長だというのだ。
「国を手に入れられるだけではなくですから」
「国を手に入れるだけならばまだ容易い」
「容易いですか」
「しかし問題はその後じゃ」
信長から言うのだった。
「政じゃ。それが大事ではないか」
「その通りです。だからこそ伊勢と志摩もまた」
「治める。治めずして何故国を手に入れるのじゃ」
こうまで言うのである。
「治めぬ国、治めぬ天下なぞ手に入れても何の意味もないわ」
「ですな。国も天下も手に入れてこそ」
「それに伊勢と志摩はじゃ」
「その二国はですか」
「実に治めがいのある国じゃ」
それを楽しみにさえしているのだった。信長はそうした意味で信玄と同じだった。信玄もまたなのだ。治めることを念頭に置いているのだ。
「土地は肥えしかもよい町も多い」
「しかも伊勢神宮もありますな」
「あそこも見所じゃな。旅人も呼べる」
「まことによいこと尽くしの場所ですな」
「しかしじゃ」
信長はだ。ここでだ。顔を曇らせてだ。こう話すのだった。
「伊勢には本願寺もおるからのう」
「本願寺ですか」
「そうじゃ。爺はどう思うか」
平手の目を見ての問いだった。
「あの坊主達については」
「そうですな。我等は今のところあの寺とは何もありませんが」
「それでもじゃな」
「恐ろしい者達です」
平手もだ。彼等については剣呑な顔で述べるのだった。
「一度敵に回せばそれこそ」
「朝倉じゃな」
「はい、あの家は身動きが取れなくなっております」
「加賀から来てその領国である越前でも一向宗が暴れておる」
一向一揆の者達が暴れてだ。それでどうしようもなくなっているのだ。
「朝倉宗滴がいるからどうにかなっておるがな」
「若しあの者がいなければですな」
「まず終わりじゃ」
そうなるというのだ。朝倉はだ。
「朝倉はそこまでやられておる」
「北陸にかなりの力を持ち」
「近畿もじゃ」
本願寺は北陸の加賀に拠点を持つが近畿にもいるのだ。むしろ近畿こそ彼等の力が最も強い。大坂の石山にだ。総本山があるのだ。
その総本山があるからだ。近畿にはなのだった。
「近畿に入れば至るところに本願寺の寺がありじゃ」
「そして門徒がおりますな」
「あの者達をどうするかじゃな」
「あの者達についてはです」
どうするべきか。平手は常識から話した。
「やはり。対決するのはです」
「避けるべきじゃな」
「その数が違います」
門徒の数がだというのだ。
「老若男女全てが立ち上がりますから」
「しかもあの者達は死ぬことを恐れぬしな」
念仏を唱えて死ね
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