第四十三話 清洲に帰りその十
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「元々今川の縁者じゃしな、北条は」
「そのうえ嫡男氏政殿の奥方は今川義元の娘」
「さすればそこに向かう者もおるじゃろう」
「ではそのどちらかに」
「それに加えてじゃ」
ここからがなのだった。今信長が言いたいことであった。
「主と跡継ぎが尾張におるな」
「では。義元殿にあくまで忠誠を誓う者達は」
「この国に来る」
まさにだ。彼等の国にだというのだ。
「そうなるわ」
「左様ですか」
「さて、今川の臣にも優れた者は多い」
信長の話が核心に入る。彼が今この場でまさに言いたいことにだ。
「その者達も欲しいのう」
「しかしその者達は」
「ははは、首を討ってはそれはできんかった」
その話もする信長だった。
「状況が状況じゃったから虜にできぬとあれば首を討てと言ったがな」
「しかし虜としたならば」
「政じゃ。外への政を行う」
そうするというのだ。政は内にだけ向けられるものではないのだ。
「その際はじゃ」
「お待ち下さい」
信長の話をここまで聞いてであった。平手は彼に問うた。
「外への政と仰いましたが」
「それをするのじゃが」
「しかし今川は滅びます」
そうなるというのだ。国が空の今武田が入るとだ。必然的にそうなってしまう。これは考えずとも容易にわかるようなことであった。
「その今川とですか」
「そうじゃ。まあ見ておれ」
「殿が為されることですか」
「こちらに来る今川の者達は虜にしておる者達も含めてわしの家臣とする」
笑みさえ浮かべてだ。信長は言った。
「全てのう」
「そうされると仰るのですか」
「左様じゃ。だがそれは時が来てからじゃ」
「それからですか」
「伊勢じゃ。伊勢の国人共は間も無く次から次にこちらに来るぞ」
織田、即ち彼自身にだというのだ。
「一つが来ればまた一つ、次から次に来るわ」
「そうなると仰るのですか」
「してじゃ。爺にも動いてもらうが」
「その伊勢にでございますか」
「左様。爺には北畠の家を頼もうか」
「守護を務めるあの家の」
「頃合いを見てあの家に向かえ」
そのだ。伊勢の守護である北畠家にだというのだ。
「大河内の城までな」
「して。あの家も取り込むと」
「あの家には跡継ぎがおらん」
戦国においては最大の泣き所となるものであった。それを避ける為にどの家も娘婿を入れたり養子を迎えたりしている。血が絶えてはそれで何もかも終わりだからだ。
そして信長もそれをよくわかってだ。今平手に話すのである。
「さすれば。跡継ぎを出してやってじゃ」
「あの家を手中に収めますか」
「長野も神戸も同じじゃ」
その二つの家もだ。事情はほぼ同じだった。
「弱い国人達は放っておいても最初に来る者が出ればそこから次から次に来る。三つの家の周りの
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