第四十三話 清洲に帰りその七
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「よく見ておれ」
「わかりました。それでは」
丹羽も主のその言葉に頷く。そうした話をしてだ。
そのうえでだ。信長はまた茶を飲んだ。満足した顔であった。
その彼にである。今度は原田が言ってきた。
「しかし。真に鮮やかに勝つことができました」
「驚いたか」
「正直に申し上げて宜しいでしょうか」
ここでだ。原田はこう信長に言ってきた。
「それがしの考えを」
「言ってみよ」
そうしろとだ。信長も応える。それを受けてだ。
原田も真剣な顔で頷いてだ。そうして話すのであった。
「まさかここまで完全に勝てるとは思いませんでした」
「やはりそう言うか」
「今川は二万五千」
それに対してだというのだ。
「我等は二千。これではです」
「普通は篭城じゃな」
「はい」
殆んどの面々が考えることだった。
「美濃との境に配している平手殿の一万二千の兵が援軍に来てです」
「兵法の常道ではそうじゃな」
「若しくは兵を集めそのうえで決戦を挑む」
この常道もまただ。原田は話した。
「その二つのうちどちらかしかなかったですが」
「しかしそれでは損害が大きい」
信長は言った。
「戦が長引くやも知れぬ。そうなれば斉藤が出て来る」
「美濃の斉藤」
「あの家がですね」
「その通りじゃ」
信長の脳裏からこの家のことは一刻も離れてはいなかった。彼は今川だけでなくだ。斉藤も含めて戦のことを考えていたのである。
「それで早く終わらせたかったのじゃ」
「して織田の名を挙げる為にも」
今度は池田が言った。
「鮮やかに勝つことをですな」
「この戦はそこまでせねばならなかったのじゃ」
まさにだ。そうした戦だったというのだ。
「それが上手くできた。しかし
「しかし」
「しかしといいますと」
「二度はせぬ」
しないというのだ。決してだ。
「この戦い方はじゃ」
「二度とされませぬか」
「そうだというのですか」
「確かに考え抜いてした」
それは事実だ。だがそれでもだというのだ。
「しかしそれでもじゃ」
「何故二度とされぬのですか?」
池田がまた問うた。
「それはまた」
「戦は本来ああして奇襲で勝つものではない」
それはだ。違うというのだ。
「確かに敵の虚は衝くものだ」
「それでもですか」
「ああしたことは二度としない」
「そうだというのですか」
「そうじゃ。少ない兵での奇襲は確かに鮮やかじゃ」
その鮮やかさはいいというのだ。
「しかし多くの相手に少ない兵で挑めば一歩間違えればじゃ」
「無惨に敗れますな」
「そうなるますな」
「左様、それよりもじゃ」
どうかというのだ。
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