第四十三話 清洲に帰りその六
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「そこを手に入れいよいよじゃ」
「美濃ですな」
「あの国を手に入れると」
「手順を踏む」
信長は焦ってはいなかった。決してだ。
「確実に進めていくぞ」
「それでまずは伊勢ですか」
「伊勢を手に入れれば織田は百万石を優に超える」
伊勢はそれだけ大きいのだ。織田は今の尾張だけで六十万石程である。伊勢と志摩は合わせて八十万石、しかも多くの港があるのだ。これが非常に大きいのだ。
「兵にして三万を超える」
「それだけで武田や上杉にも匹敵しますな」
「それだけの力が手に入ると」
「そうじゃ。確かに今川の領国全てを手に入れれば百万石を超える」
今川は百万石だった。三国合わせてだ。
「しかし武田と戦うことを考えればじゃ」
「伊勢の方が宜しいですな」
「やはり」
「左様、伊勢と志摩じゃ」
そして美濃だというのだ。信長の戦略の一段階はこう決まっていた。
そのことを話しながらだ。信長は清洲に戻った。するとすぐにだ。
信行が戻って来た者達を笑顔で出迎えだ。こう言うのだった。
「御見事でした」
「うむ、勝ったぞ」
満面に笑みを浮かべてだ。信長も応える。
「今川にな」
「はい。それではですね」
「宴じゃな」
その話になった。
「それじゃな」
「既に酒は用意しております」
酒を話に出してだ。それからだった。
そのうえでだ。信行はこれを話に出した。
「茶も」
「ほう、わかっておるのう」
「兄上はそちらですから」
「そうじゃ。わしは酒はよい」
飲めないのは相変わらずだった。信行もそのことはよくわかっている。
「やはり茶じゃ」
「ですから。茶もまた」
「では戦に勝った祝いの茶を飲もう」
「そして飲める者は祝いの酒を」
「皆で飲むとしようぞ」
こう話してだ。織田の者達は酒、若しくは茶を楽しむのだった。信長は当然茶だ。それを飲みながらだ。家臣達に話すのであった。
「捕らえた者達じゃが」
「今川殿ですね」
「そして氏真殿ですね」
「そうじゃ。他の今川の者達にもちゃんと食わしてやれ」
それは忘れるなというのだ。
「それと飲みものもじゃ」
「はい、それは無論」
丹羽がすぐに答えてきた。
「しております」
「ふむ、早いな」
「人は飯を食い水を飲まねば死んでしまいます」
正論だった。まさにだ。
「だからです。それはもう」
「うむ。それではよい」
それでいいとだ。信長も話した。
「飲み食いさせておるのならな」
「虜にはしていますが」
それでもだ。そうしたことは忘れないというのだ。
「それでもしかとです」
「少なくとも首を刎ねるつもりはない」
信長は殺さないというのだ。
「暫くは虜にしておれ」
「暫しですか」
「まあ少し経てばその虜も終わる
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