第四十三話 清洲に帰りその二
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「わかったな。兄上が戻られるまでに時間がないぞ」
「わかりました。それではです」
「今よりかかります」
「そうさせてもらいます」
「うむ、ではかかろう」
信行がだ。その一切を取り仕切るというのだ。留守役としての役目である。
「酒に馳走を用意してじゃ」
「そして茶もですな」
「殿にはそれを」
「兄上は酒が飲めぬ」
飲まないのではなかった。そちらなのだ。
「だからだ。ここはじゃ」
「茶も用意してそのうえで」
「殿にお出しする」
「そうしようぞ。それではな」
「はい、それでは」
「今より」
こうそれぞれ信行に応えてだ。そのうえでだった。
留守を守っている彼等は宴の用意にかかった。留守の者達も忙しい状況になってきた。ただしそれは喜ぶべき状況であった。
信長は意気揚々と清洲への帰路についていた。その途中で話を聞くのだった。
「今川の兵達の多くは算を乱して遠江や駿河に去っております」
「鷲津の囲みも解かれました」
「今川の者達は全て尾張から去ろうとしております」
「そうなっております」
「ふむ。ではその後詰はじゃ」
その壊走状態の今川でも後詰はいる。それが誰なのかをだ。信長は報告してくる家臣達に尋ねた。
「誰じゃ」
「松平元康」
この名前がだ。すぐに出た。
「あの者がです」
「それになりそうです」
「左様か。やはりな」
その名前を聞いてだ。信長は。
納得した顔を見せてだ。こう話すのだった。
「あ奴じゃろうな」
「そう思われていたのですか」
「松平だと」
「あ奴か太源雪斎しかおらん」
その二人だというのだ。
「どちらかしかのう」
「それでなのですか」
「松平だというのですか」
「後詰は」
「後詰を出せただけでも凄いことじゃ」
それだけでもだとだ。信長は話すのだった。
「何しろ今川は主も跡継ぎもおらんからのう」
「我等が捕らえたことによりですね」
「そのうえで」
「そうじゃ。それで後詰が出せるとすれば」
それができるのはだ。誰かというとであった。
「その太源雪斎だけじゃ」
「あの和上のみですか」
「それができるのは」
「あの和上はまた特別じゃ」
信長は雪斎についても話す。しかもその評価はかなり高いものだった。
「実質今川を取り仕切っておるからのう」
「戦だけでなく政も」
「それについてもですな」
「そうじゃ。その和上だからこそ」
どうかというのだ。
「後詰を出せるのじゃ。じゃがここで問題なのは」
「自分は後詰にはなれぬ」
「そういうことですな」
「己が後詰になってどうするか」
信長はそのことを問題にして話す。
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