第四十二話 雨の中の戦その九
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「嫡男の今川氏真も捕らえた」
「これにより今川家は今は主も跡継ぎもいない」
「つまり駿河は空」
「駿河だけでなく遠江も三河も」
「さすればこの三国は」
どうなってしまうのか。その話も為される。
「まず駿河は武田が来ますな」
「それは間違いありませんな」
「今川の主がいないとなればそこはまさに草刈場」
「それならば攻め入っても何も言われる道理はありません」
何も気兼ねすることなくだ。攻め入ることができるというのだ。武田だけでなくどの者にとってもだ。こんな都合のいい話はないのだった。
「丁度武田には大義名分もありますしな」
「嫡男の武田義信の妻は今川義元の娘」
「さすれば今川の縁者として攻め入っても何の問題はない」
「そういうことですな」
「さすれば駿河は」
どうなるかというのであった。その駿河がだ。
「武田がそのまま手中に収める」
「北条は関東を攻めることと治めることに忙殺されています」
「さすればあの国は全て武田のものとなる」
「あの見事な国が」
「武田にとっては非常に大きなこと」
只でさえ強大な武田がだ。さらに力をつけるというのだ。
そのことはだ。まさにそのままだった。
「武田は天下を目指すだけの力を得る」
「そうですな」
「そうなります」
こう話すのだった。彼等はだ。
その話をしてだった。さらにだった。
「遠江もかなりの部分が武田のものとなりましょう」
「問題はその残りと三河ですが」
「さて、どうなるか」
「それも気になりますな」
「そして最も気になるのは」
ここでだ。彼等の話が変わった。
「やはり」
「そうじゃのう。尾張じゃ」
「その勝利を収めた織田」
「あの者ですね」
こう話されていくのであった。
「予想外の勝利でした」
「あれだけ見事だと波に乗ります」
「さすれば。尾張一国からさらに」
「さらに伸びますな」
「まずは」
最初はだ。どうかというのだった。
「伊勢ですな」
「あの国は国人が多く小さな勢力に分かれています」
「さすれば策を仕掛け手中に収めるのは容易い」
「まさに目の前に転がっている餌です」
そうしたものでしかないというのだ。伊勢はだ。
「織田信長という蛟の餌です」
「それを喰らいいよいよですな」
「天に昇る力を得ていく」
「そうなっていきますか」
「やはり」
「暫くはその勢いは止まらぬ」
一人が言った。
「伊勢も美濃も手中に収め」
「さらにですか」
「それからも」
「上洛だ」
それだというのだ。上洛だとだ。
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