第4章 聖痕
第32話 使い魔のルーン
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……混濁した意識が、覚醒に向かう。
少し……いや、かなり頭の中がボォ〜とした感じなのですが、少なくとも気分が悪い訳ではないですね。
それにしても、ヤケにふわふわした感触なのですが、ここは一体……。
寝惚けた状態から、少し右手を握ると、優しい感覚でそっと握り返して来る小さな、少し暖かい何か。
……右手に触れるこの感触は、夢の世界で感じた柔らかい手の感触。
ゆっくりと瞳を開けると、其処には見慣れたタバサの部屋の天井。但し、この世界にやって来てからあまり感じた事の無い柔らかい布団と枕の感触。
そして、かすかに感じる甘い……彼女の香。
俺は、基本的に言うと頭に枕をするのではなく、首の下に枕をするのですが……。
……などと、今はどうでも良い事が頭に浮かんだのですが。
おそらく、誘いの香炉に残った魔力の残り香のようなモノに当てられて、眠りへと誘われた俺を、自らのベッドにタバサが眠らせてくれたのでしょう。そこで、見当はずれの文句を言うなどとは不敬極まりない行いと成りますから、流石にこれは反省すべき事柄ですか。
そうして、この俺の右手に握りしめている小さな手は……。
大方の想像は付くのですが、一応、そちらの方に視線を送って見る。
予想通り、俺の手を握ったままでベッドの脇に置いた椅子に腰を掛け、そして、ベッドに上半身を預けた形で眠りに付いた俺の蒼き御主人様。
【誘いの香炉で眠りに就いた人間を目覚めさせるには、その眠った人間に触れた状態で誘いの香炉で眠るのが一番確実なのです。
そうすれば、相手の夢に乗り込んで行って、夢の中から起こす事が出来るから】
青玉に封じられし、黒き知恵の女神ダンダリオンからの【念話】が届く。
成るほどね。夢の最後のシーンで俺をショゴス(仮)から引っ張り出して、更にそのまま夢の空間からサルベージしてくれたのはタバサだったと言う事ですか。
確かに、あの時に突然、俺が眠って仕舞ったとしたら、その原因はあの香炉以外には考えられないですし、タバサには俺の心の中、記憶が判る訳は有りません。
つまり、俺の心の中に、向こうの世界に残して来た大切な物が無いとは限らないと言う事です。
そう。其処に、俺にも現実では取り戻す事の出来ない、失って仕舞った大切な物が存在している可能性が有ったのですから。
……そして、それは強ち間違った認識でない事も事実ですから。
結局、タバサの心を護る心算だったのに、俺の方が護られて仕舞ったと言う事ですか。
そう考えながら、上半身のみを起こして自らの主人を見つめる俺。
但し、未だ右手は繋いだままで。
これは、無理に振りほどく理由も有りませんし、それに正直に言うと
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