第4章 聖痕
第31話 夢の世界へ
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感情を読み取る事は出来なかった。
……って言うか、
「タバサ」
完全に瞳を閉じたショートカットの少女。その顔を俺が見間違えるはずはない。
半ば予想していた展開とは言え……。
瞬間、更に腐臭がキツク成る。
「タバサ、何で、そんなトコロで……」
しかし、眠ったままの彼女は俺の言葉、そして声にさえも反応する事は無く、ヤケに人形じみた美貌を俺に対して見せるのみ。
刹那、八方から俺を包み込もうとする触手。その姿はまるで、ある種の食虫植物が擬態した囮ごと、獲物となる虫を己の身に取り込もうとするかのような動き。
八本の触手……いや、ある種の花弁を閉じるかのような、その完全にシンクロした動きの中で、僅かな差を掻い潜り、同時に如意宝珠を壁盾の形に起動させ、右上方部に僅かな隙間を作り上げ、辛くも虎口から脱出する俺。
しかし、その事によって、それまで露出していたタバサの胸像部分が、完全に黒い原形質部分に呑みこまれて仕舞った。
再び迫り来る触手の群れを、かなり上空にまで退避する事によって躱す俺。
しかし……。
三度、上空より、黒き不定形生物を睥睨しながら、思考を纏めようとする。
ここは、冷静な判断を要求されている。
問題は、何故にタバサがこんな夢の世界で、あんな陰気の塊の核みたいな役割を演じているのか、と言う事。
仮説としては……。
遙か、下方を睥睨し、黒き不定形生命体の辿って来た道と思われる、無に覆われた世界を見つめる俺。そして、
ここは、ヘカテーやショゴス(仮)が顕われている以上、夢の世界とは言っても、その最深部。全ての人類の夢に繋がっていると言われている集合的無意識と呼ばれている領域に存在する空間だと思います。
ここより更に深い領域……自然とか世界に繋がる場所から、神や悪魔などが顕われるとも言われていますからね。
その世界を破壊する……無に帰するような化け物の核としてタバサの姿が象徴として現れていると言う事は、この夢の世界は、タバサの夢の世界から直接侵入出来る世界と言う事なのでしょうか。
……確かに可能性は有るけど、確実では有りませんか。
それに、今のタバサからは未来を見つめる前向きな気を感じますけど、彼女の言葉の中に、以前は復讐を考えた事が有る、と言う言葉も有りました。
そして、ここが夢の世界……つまり、過去の記憶の世界なら、その当時の、全てを破壊し尽くす狂気に近い衝動を表現した存在として、あのショゴス(仮)が顕在化した可能性は有りますね。
それに、その仮説を補うかのように、タバサは俺の呼び掛けに反応する事は無かった。
あの眠れる胸像化したタバサが、嘗て、復讐を考えた時の彼女なら、彼女
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