第4章 聖痕
第31話 夢の世界へ
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と判っている呟きが聞こえたのか、その理由は判らない。
そうして、その少女の声は、現在聞こえているハミングを奏で続けている女声に似ているような気がするのですが……。
「もしも、叶わない夢ならば……」
少女の声のみが、紅い世界に……。いや、俺の心にのみ響く。
タバサと良く似た話し方。そして、良く似た声で。
「懐かしいあの思い出と共に、夢を見続けて居たいと思う事は……」
ゆっくりと、彼女により相応しい話し方……少し硬質な雰囲気で、抑揚の少ない話し方。しかし、その話し方が、良く現在の彼女の心を表現しているような気がします。
僅かな余韻。そして、紅の世界に忍び寄る夜の気配。
確かに、そう思う事は罪では有りません。まして、逃げる事を自らに禁止しても意味はないでしょう。
逃げずに立ち向かって行って、心が壊れるぐらいなら、逃げた方がマシ。
共に思い出を築き上げた相手だって、きっと許してくれます。
全ての人間が強い訳ではない事は、誰だって知っているから。
まして、そんな相手が傷付く事を、誰も望んでなどいないはずですから。
少年が少女に対して何かを告げる。そして、少女の方が小さく首肯いた。
やがて、再び歩き出す二人。何故か、二人が話している間、いくら前に進んだとしても近付く事が出来ずに距離が詰まる事がなかった。
更に、今のやり取りにどのような意味が有ったのか判らなかったし、何故か少女の方の言葉は聞こえたのですが、少年の方の声は聞こえなかった。
矢張り、これは夢の世界。そして、彼と彼女は夢の中の登場人物と言う事なのでしょうか。
問題は、この夢を何故、俺が登場人物として見ているのか、と言う事。
もっとも、俺が見ている夢なのか、それとも誰かが見ている夢に、俺が巻き込まれているのかが判らないだけに、今、何かを考えたとしてもあまり意味はないのですか。
☆★☆★☆
角を曲がったふたりを、やや足早に追い掛けた俺だったのですが、何故か彼と彼女が曲がった先にはふたりの姿は無く、代わりに少し先の辻に黒いローブに身を包んだ一人の女性の姿が有るだけでした。
そして、その女性の足元には、彼女の飼い犬なのでしょうか。黒い大型犬が、彼女に付き従うかのようにちゃんと伏せをした形で座り込んでいました。
十字路に店を出すロマ系の女性占い師と、彼女の飼い犬らしい黒い大型犬。
……かなり危険な雰囲気なんですけど、彼女の伝承や神性に夢に関する部分が有ったでしょうか。
俺の記憶が確かなら、十字路と言うのは、この世と彼の世の交わる場所と言う伝承が有り、冥府に関係の深い彼女の現れる場所としての伝承も残っています。
まして彼女は、現在はギリシ
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