第4章 聖痕
第31話 夢の世界へ
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の程度の関係の相手なら、完全に相手に取り込まれた魂を掴み取る事が出来はしない。つまり、タバサと俺の縁は、少なくとも、それぐらいには深い絆が有ったと言う事。
そんな相手を見捨てられるほど、俺は強くはない。
【それに俺に命令出来るのはこの世でたった一人。俺だけや】
俺の【念話】に、少し弱まり掛けたタバサの手に少しの力が籠る。
これは、先ほどの台詞が正気に戻った彼女が諦めたと言う訳ではなく、差し出した手の持ち主の事を心配しての台詞だったと言う事。
それに、その手の持ち主が、どう有ってもこの手を離す事が無いと言う事を知ったと言う事でも有る。
掴んだ手を離す事なく、無理矢理にタバサを自らの方に引き寄せようとする。
しかし、矢張り、そう簡単には行く訳は無かった。
刹那、徐々にショゴス(仮)内部へと引き込まれて行く俺。
左腕から、肩。そして、顔の部分が……。
その瞬間、笛を吹くような、甲高い化鳥の鳴き声に似た何かが辺りに木霊する。
それは、喜び。歓喜。俺を取り込む事が出来る。伝説の青龍を取り込む事が出来る、この黒き魔物の喜びの歌。
彼女、タバサが俺を害する訳はない。俺を、こんな深く、暗い牢獄に、自らと共に閉じ込めて、彼女に笑顔が戻る訳はない!
それに、ここは夢の世界。つまり、ここでは息をする必要が無いと言う事。だから、少々頭が引き込まれたぐらいどうと言う事はない。ようは、俺自身が諦めなければ、どんなに追い詰められたとしても、逆転のチャンスは有ると言う事。
そう。つまり現状は、俺自身が俺と言う存在を認識しているから、武神忍と言う形を再現出来ているが、この認識がぼやけたら、俺の魂は武神忍と言う形を維持出来なく成って仕舞うと言う事でも有る。
ショゴス(仮)に頭部を取り込まれた瞬間に閉じて仕舞った瞳をゆっくりと開ける俺。ここは夢の世界の更に異世界。今の俺は、異世界の中の、更に異世界との境界線上に身体を置いていると言う事でも有ります。
現実世界に肉体を。夢の世界に右腕及び左胸から下の部分を。
そして、左腕から肩に掛けてと頭の部分をショゴス(仮)の内部に。
こんな珍しい体験は早々出来る事はないですから。見て置かなければ損でしょう。
……そう思い込む必要も有りますからね。
ショゴス(仮)の内部。そこは何もない。……いや、黒く粘性の強い何かと、俺の左手を両手でしっかりと掴む蒼き少女の姿以外は何もない空間でした。
間違いない。俺の左手を掴んでいたのは、蒼い髪の毛をショート・ボブに切り揃え、彼女に相応しい白い清楚なブラウスと、普段通りの黒のミニスカートに身を包んだ、俺の知っている蒼き姫で間違いなかった。
但し、彼女の右腕には
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