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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第31話 夢の世界へ
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組の姿が瞳に映った。

 一人は俺と似た背格好の青……少年。右手には明らかに日本刀と思しき優美な反りの剣を持ち、魔術師の証のマントを付けた、……蒼い髪の少年。
 もう一人は、タバサに良く似た少女。但し、彼女のトレード・マークと成っている魔術師の杖を持たず、そして、魔術師の証のマントを付けていない。

 紅い世界の中、彼らこそが主人公であり、俺はその主人公達の姿を、画面の向こう側から見つめる観客のように思えて来る。
 そう。幻想世界の住人の証である髪の毛の色が、俺に対して、そう言う想いを抱かせているのかも知れない。

 しかし……。

 俺の夢の登場人物にタバサが登場するのは理解出来るのですが、もう一人の登場人物は一体、誰なのでしょうか。

 いや、別にタバサの隣に居るのが自分でない事に不満が有る訳ではないのですが。
 それに、その少年より頭ひとつ分ほど背の低い少女は、タバサに似てはいますけど、何処かが少し違うような気もするのですが。

 それでも、その辺りについては、今はどうでも良い事ですか。もっと彼と彼女に近づけば疑問も無くなるでしょう。

 そう思い、明確な目標が出来た事により、更に早足で近付こうとする俺なのですが……。
 しかし、ある一定の距離までは近付けるのですが、それ以上は何故か近付く事が出来ない。
 どう見ても、男性の方は、少女の歩幅や歩調に合わせているとしか思えないのに……。

 矢張り、ここは夢の世界だと言う事なのでしょうね。
 更に、何処からか聞こえ続けているハミング。

 まるで醒めない夢の中、永遠に鳴り続けるバック・グラウンド・ミュージックのように。

 そして、最初は確かに男声だったのに、何時の間にかそれは、女声(ジョセイ)に変わっていた。
 但し、この歌声(こえ)も俺の知っている声では有りませんでしたが。

 そして、それはまるで、先ほどの曲に対しての答えを返すような曲。
 当たり前の恋の歌を女声が奏でる。先ほどとは違う、しかし、同じような恋の歌を。

 そして、その響きの中から、切ないような想いと、そして、強く傍に居て欲しいと言う想いを感じる。
 男性の方は逢いたい。そして、彼女の方は傍に居て欲しい。
 出来る事なら、このふたりの想いは叶えて欲しい、そう思わせるに十分な何かを伝えて来る。そんな歌声(ハミング)

 ゆっくりと、何処かに向かって歩んでいたふたりが、突然立ち止まる。
 そして、少年の方が何かを少女に語り掛けている。

「彼女の気持ち、わたしには判る」

 ……そう、まるで独り言を呟くような声で、少女が小さく呟いた。
 冷たい紅の世界の中で、彼女の呟きだけが小さく白くけぶる。

 何故、これだけの距離が有る中で、更に小さい声だ
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