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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第31話 夢の世界へ
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 ……えっと。ここは何処でしょうか?
 少しボケた頭を振りながら、周囲を見回してみる俺。

 やや弱々しい夕陽に、少し冷たい……そして物悲しい紅に染まった風景……。

 記憶の彼方に存在するような、何処かで見た事が有る道。
 懐かしい思い出を喚起するような、何処かで見た事が有る街並み。

 紅く染め上げられた酷く虚ろな空間(世界)の中心に、ぽつんと一人残された俺。

 何故だか記憶を刺激する風景なのですが……。
 そう、まるで、夢の中で見た事が有るような曖昧な記憶……。

 ……夢?

 そう言えば、誘いの香炉(いざないのこうろ)と呼ばれていた魔法のアイテムを見ていた時に、その香炉に残っていた微かな灰のような物が飛び散った瞬間、意識が途絶えて……。

 ここは、俺が作り上げた夢の世界と言う事なのでしょうか?

 確かに、夢の作り上げた世界と言われたら、そうなのかも知れないのですが……。

 しかし、俺の心が作り上げた世界が、何故にここまで物悲しい雰囲気なのでしょうか。
 物悲しさを覚える夕闇迫る故郷の景色。何処かから、学校から、友人の家から、仕事先から家に帰る道を思い出させる時間帯とそれに相応しい風景。ただじっとその場に立って、夕闇迫る街を見ているだけで涙があふれて来る。そう言う景色。

 確かに、日本人の原風景の中には確実に存在している世界だとは思うのですが……。

 但し、この世界に漂う寂寥感(せきりょうかん)を生み出している物の正体は判っています。
 それは、この世界の登場人物が俺一人だけですから。

 見た事が有る街並み。そして、幼い頃の記憶を刺激する世界()の中に登場する、たった一人の登場人物が俺だけですから。
 夕映えが西の空に傾き、俺以外、誰一人として存在していない世界()を、赤く、紅く、染め上げる。

 …………?

 そう思った刹那、誰かの奏でるハミングが聞こえて来る。
 紅に染まった物悲しい雰囲気の中に聞こえて来る、懐かしい故郷の歌。
 当たり前の恋の歌。本当にそうだったら、とても素敵な事だと思う事を歌った恋の(うた)

 男声(ダンセイ)

 何かは判らないけど、そのハミングの聞こえた方向に進む。

 何かに急かされるように。
 何者かに追われるように。

 御世辞にも上手いとは言えないそのハミングは、しかし、大きな声では無かったのですが、どんなに離れて居ても聞こえて来る不思議な歌声でした。
 ……おそらく、夢の世界故に聞こえる歌声だったのでしょう。

 ハミング(歌声)の聞こえて来る方向に少し進む。最初の角を左に曲がり、声の聞こえる方向にゆっくりと(急ぎ足で)進むと、紅い世界の中をゆっくりと何処かに向けて歩む二人
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