第四十一話 奇襲その八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「それで機嫌を取りにじゃな」
「その様です」
「その様なことをせずともじゃ」
義元は上機嫌なまま話していく。
「麿は寛容じゃがのう」
「そうですな。父上は民に関しては」
「大事にせねばいかん」
元々戦よりも政の者だ。それならばだった。
「民を粗末にする者に国を治める資格はない」
「はい、そうですね」
「それは守らねばならん」
「ですな。確かに」
「そなたもわかっておるな」
我が子への言葉だった。
「そのことは」
「はい、それは」
「それがわからぬ者は天下に何かをしてはならぬ」
また言うのだった。
「ましてや天下を治めるなぞはじゃ」
「なりませぬな」
「六代の将軍であったあの方を思い出すのじゃ」
足利義教だ。暴虐の人物と言われている。
「あまりにも苛烈で無慈悲であったのう」
「あの方ですな」
「そうじゃ。公方様ではあるが」
本来は言うことも憚れるがだ。それでもあえてだというのだ。
「あの方の暴虐はあまりじゃったのう」
「左様ですな。あれは無体にも程があるかと」
「ああしたことをしてはじゃ」
どうかというのだ。その将軍の様なことをしてはだ。
「やがて家臣からも民からも見放される」
「そうなるのは必定でございますな」
「うむ、第一に天からも見放される」
「そうなればしまいですな」
「何もかものう。だからよ」
「国の主は民を大事に扱うべきと」
将軍義教の暴虐は守護や直臣、寺社や女房達に及ぶものだった。しかしそれがあまりに酷くだ。民も彼を至極恐れていたのである。
そうなってはならぬとだ。義元は話すのである。氏真もそれを聞いている。
「そのことを肝に銘じて」
「何ごともしておくのじゃ」
「わかりました」
「さて、では今はじゃ」
どうするかというのであった。義元は真面目な顔から明るい顔になってだ。そうしてそのうえでこう周りに話した。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「今より酒をですな」
「飲みますか」
「勝ちの前祝いじゃ」
それでだ。飲むというのである。
「よいな。楽しくやろうぞ」
「では和歌も歌い」
「連歌もされますか」
「よいのう」
和歌や連歌と聞いてだ。余計にだった。
義元は機嫌をよくさせた。彼は京文化が好きでだ。和歌や連歌といったものは大好きなのだ。無論他のものもかなり愛好している。
そのうえでだ。彼はこう周りに話した。
「では連歌をやろうぞ」
「飲みながらですな」
「そのうえで」
「そうじゃ。歌えなかった者は罰としてそこで杯を空ける」
連歌の遊びでの罰をだ。そのまま入れているのだ。
「そうするぞ」
「ではそのうえで」
「酒を楽しみつつ連歌としますか」
「これより」
「そうするとしよう。さて、織田を
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ