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戦国異伝
第四十話 桶狭間へ二

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「ではじゃ」
「はい、法螺貝をですね」
「吹かせよ。よいな」
「それでは」
 こうしてだった。法螺貝を吹かせるのだった。その間にだ。
 信長はだ。単騎馬を飛ばした。そうしてだった。
 法螺貝が鳴らされた。するとだ。
「な、何だ!?」
「法螺貝!?」
「出陣だと!?」
「まさか!」
 家臣達はだ。一斉にだった。
 それまで茶を飲みながだ。自分達の主がどういった考えなのかわからず憮然としたり考えたり項垂れたりしていたがだ。それでもだ。
 その法螺貝の音を聞いてだ。すぐにだった。
 顔をあげてだ。まずは周りを見回したのだった。
「何処に出陣じゃ!?」
「まさか今川とか」
「戦をするというのか!?」
「今からか」
「出陣するというのか!」
 その彼等にだ。帰蝶が言うのだった。
「殿はもう出陣されました」
「なっ、もうでござるか!」
「もう出陣されたのですか!」
「そうです。お一人でです」
 帰蝶は彼等にこうも話した。
「今しがた出陣されました」
「では一体どちらに!?」
「どちらに行かれたのですか」
「どの場所に向かわれたのでしょうか」
「熱田でしょう」
 帰蝶は信長に向かう場所は教えられなかった。しかし夫の考えを読んでだ。そのうえでだった。彼女はこう彼等に話したのである。
「熱田に向かわれたのでしょう」
「熱田神宮でございますか」
「そちらにですか」
「そうです、おそらくは」
 そこだとだ。また話す帰蝶だった。
「そこに向かわれたのです」
「熱田。それでは」
「戦勝祈願にですか」
「それでまずは熱田にでございますか」
「行かれたのですか」
「そのうえで今川殿の軍に向かわれるでしょう」
 帰蝶は再びだ。信長の考えを読んだうえで話した。
「そうされるでしょう」
「ううむ、うって出られるとは」
「しかも一騎で!?」
「御自身だけで」
「ならん!」
 柴田がだ。家臣達を代表して言うのだった。
 そしてだ。周りの同僚達にだ。こう問うのだった。
「このまま殿を御一人で行かせるのか」
「いや、それは」
「殿御一人で今川の軍勢の相手なぞできん」
「そんなことは誰でも無理だ」
「一人であれだけの軍勢と勝敗をつけるなぞ有り得ん」
「それでは」
「わし等も出陣じゃ!」
 柴田は即断した。まさにそれだった。
「よいな、我等全員でじゃ!」
「うむ、そうしようぞ!」
「この清洲の二千!」
「二千で出るぞ!」
「そうするぞ!」
 こうしてだった。彼等もだった。
 慌しく具足を着けてだ。そしてだった。
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