第四話 元康と秀吉その九
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「そういうことで」
「ならよいのだがのう」
「それでは」
「そしてじゃ」
義元は我が子との話を終えてだ。また元康に顔を向けてきた。そうしてまたしても彼に対して声をかけるのだった。
「まず御主はじゃ」
「一体何をすればいいのでしょうか」
「政にあたれ」
こう告げるのだった。
「川に堤を築くのも田畑を開くのも。そして町を栄えさせるのもじゃ」
「そういったことをしてからなのですね」
「そうじゃ。まずは政じゃ」
義元はこのことについて話す時にだ。元康だけでなく氏真も見ていた。つまり二人に対して話してみせているのである。
「それからじゃ」
「国を栄えさせてからですか」
「武田も北条もじゃ。国を見事に栄えさせておるぞ」
「左様、どちらもその政はいいものじゃ」
雪斎も語る。
「だから元康よ。今はじゃ」
「政ですか」
「戦はその後でよい」
穏やかな声で元康に告げたのである。
「よいな。その後じゃ」
「さすれば今は、ですか」
「政じゃ」
何につけてもまずはそれだというのだ。
「まずはそれなのじゃ」
「政、やはりそれですか」
「ほう」
雪斎は元康の今の言葉に面白げな声をあげた。
「御主、もうわかっておったか」
「前にある方から聞きましたので」
「ある方か」
それを聞いてだ。雪斎は察した。しかしそれに気付いたのは彼だけだった。義元も氏真もである。それが誰かさえ考えもつかなかった。
「その者、誰か知らぬが」
「凄い者なのかもな」10
こう言うだけだった。
「そなたにそんなことを言うとはな」
「確かに見事じゃ」
「はい、全くです」
雪斎は二人にこう述べただけだった。多くは語らなかった。
だがだ。その者の名を心の中で呟いてだ。こう思うのだった。
「容易ならざる相手やもな」
「政をするのは麿も好きじゃしな」
「麿もまた」
義元と氏真は政については乗り気だった。しかしである。
「戦はのう。馬に乗るのはどうも苦手じゃからな」
「戦そのものがどうも」
見れば義元は胴が長かった。そして手足が短い。そうした体形を見る限り彼は馬に乗ることが苦手なのは明らかであった。
「馬より輿じゃな」
「義元様、できればです」
雪斎がその義元に対して上奏気味に述べる。
「馬に乗られることは熱心にです」
「わかっておるのだがのう」
義元は浮かない顔で言葉を返した。
「しかしどうもじゃ」
「何かあればお逃げになられるのは御一人ですから」
「じゃから馬術と水術はじゃな」
「左様です、どちらもです」
「麿はどちらも苦手じゃ」
水練もだというのだ。
「じゃからな」
「ううむ、何かあれば」
「その時は和上がいるではないか」
雪斎を見て微笑んだ言葉だった。
「そ
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