第三十九話 なおざりな軍議その三
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「ここは是非じゃ」
「そうして義元めの首を取る」
「うむ、そうしようぞ」
「そうして一気にけりをつけるのじゃ」
これが彼等の意見だった。それに対してだ。
林はだ。こう主張するのだった。
「しかしのう。敵の数は多いぞ」
「確かに。今川は二万五千」
「それに対して我等は一万五千」
「数が開いております」
「これは否定できませぬぞ」
林だけでなくだ。彼の弟や他のどちらかというと政に秀でている面々はだ。こう言うのであった。彼等の考えはというとである。
「鷲津や丸根の面々は何とか砦を出て清洲まで退く」
「大学殿ならそれができるからのう」
彼の武勇をだ。考えての話である。
「そのうえで清洲まで撤退しこの城に篭城する」
「それから平手殿の軍が城を取り囲む敵を外から討つ」
「これだと確実に勝てますな」
「うむ、間違いなく」
「そうなりまする」
彼等はこう主張するのであった。
「決戦では果たしてそこまでいけるのか」
「やはり相手が相手です」
「確実に手を打っていきましょう」
「勝てる手を」
「いや、それはどうでござろう」
佐久間は柴田の傍にいる。そうしてだった。
疑念の言葉でだ。林達に話すのだった。
「一気に攻めなければです。斉藤が動きますぞ」
「そうじゃ。斉藤がおるのじゃ」
柴田も彼等の話をする。
「だからここはじゃ。一気に攻めるべきじゃ」
「それで負ければどうなるのじゃ」
しかし林も言う。彼も彼の考えがあってだ。それで話すのだった。
「そうなれば元も子もないぞ」
「しかし篭城すれば斉藤が動く」
「それではどうしようもない」
「だからここはじゃ」
「やはり一気に攻めるべき」
「いや、篭城じゃ」
意見は真っ二つに分かれていた。そうなってしまっていた。
その彼等に対してだ。信長はというと。
主の座で腕を組んで座ってだ。一言も発しない。その彼に対してだ。
家臣達はだ。口々に問うのであった。
「して殿は」
「どの様にお考えでしょうか」
「一体」
彼等がこう問うとである。
信長はだ。静かに目を閉じてだ。それからこう言うのであった。
「ふむ。そうじゃな」
「はい、それではです」
「どちらでしょうか」
誰もがだ。身を乗り出さんばかりにしてだ。
主に対して問う。如何にするのかをだ。
「やはり出られますか」
「それとも篭城ですか」
「果たしてどちらですか」
「一体」
「遅いのう」
信長はだ。静かにこう言うのであった。
「もうな」
「遅いとは!?」
「殿、一体それは」
「どういう意味でございましょう」
彼等はその身をさらに乗り出さんばかりにしてだった。
再び主に問う。するとだ。
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