第三十八話 砦の攻防その十一
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「そういう場合は何の容赦もせぬ」
「ですな。しかし権六殿の拳ですか」
「それを受けて五体満足でいられるというのも」
「慶次殿だけですな」
「まさに武辺者ですな」
「ああ、そこが違うのじゃ」
柴田は梶川の今の言葉に対して言った。
「あれは武辺者ではないじゃろう」
「おっと、そうですな」
言われてだ。梶川も気付いた。そのうえでだ。
彼はだ。笑いながらこう言い変えたのだった。
「ふべん者ですな」
「左様、あ奴はそれじゃ」
「御自身で戦以外では役に立たぬと申され」
「それで大ふべん者なのじゃ」
柴田もその大きな口をさらに大きく開けて言うのである。
「実際にそれに徹するのが慶次殿ですな」
「全くですな」
岡本と真木もここで言う。
「しかし。それが慶次殿」
「あの御仁らしいですな」
「うむ、あ奴が政をしだしても恐ろしい」
柴田は信長と同じくだ。彼もそうだというのだ。
「想像できん」
「では慶次殿が寝ておられるうちはですな」
「安心してよいですな」
「そうじゃ。今あ奴は気持ちよく寝ておる」
今もだ。その気の赴くまま昼寝を楽しんでいるのだ。その大きな身体を縁側に横たえてだ。高いびきをかいているというわけである。
「それならそれでよい」
「では。今は」
「我等も」
「寝るとしますか」
最後に生駒平左が言った。
「そうされますか」
「そうじゃな。寝ておくか」
柴田もそれに傾く。
「今はな」
「はい、どうも長くなりそうですし」
「それでしたらです」
「今のうちに寝てです」
「英気を養いましょう」
他の者達もだ。こう言うのだった。
そしてだ。柴田もだ。こう返すのだった。
「そうじゃな。英気を養うのも大事じゃ」
「新五郎殿に仰った通りです」
「そういうことです」
「ははは、そうじゃそうじゃ」
言われて顔を崩して返す柴田だった。
「わしが言ったのじゃ」
「それで新五郎殿はどうされていますか?」
「今は」
「うむ、書を読まれておる」
林は読書家だ。それにより培った教養でだ。織田家の知恵袋となっているのだ。彼はどちらかというと文の人物なのである。
「明の古い書を読まれておるわ」
「おお、そうした書をですか」
「読まれていますか」
「新五郎殿らしいですな」
「あの御仁もあれじゃ。書を読まれぬと」
今度は彼の話が為された。慶次に続いてだ。
「何か違うからのう」
「全くですな。それは」
「何かがおかしいのではと思ってしまいます」
「どうしても」
「そうじゃな。わしにしてもじゃ」
最後は他ならぬだ。彼自身であった。
「どうも武張っておらんと駄目じゃな」
「そうですそうです、それは」
「真にです」
その通りだとだ。周りはこぞっ
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