第三十八話 砦の攻防その六
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「皆の者落ち着くのだ!」
「むっ、殿」
「殿ですか」
「そうだ、わしだ!」
あえて大きな声を出してだ。足軽達の目を自分に向けさせた。
そしてそのうえでだ。すぐにこう言った。
「よいか、ここはだ」
「はい、ここは」
「どうされますか?」
「まずは火を消すのだ」
そうせよというのだ。
「よいな、火をだ」
「は、はい」
「わかりました」
すぐに頷く彼等だった。そうしてだ。
陣の火には水がかけられだ。すぐに消えていく。しかしその中でもだ。
陣の左右からだ。何かと呻き声が聞こえてきた。それは。
断末魔の声だった。その声もだった。
「まさかこれも」
「竹千代、無事じゃったか」
元康が顔を顰めさせたところでだ。雪斎が来た。顔から汗を流している。どうやら彼も今まで混乱する陣を駆け回り事態の収束に尽力していたらしい。
その彼が元康のところに来てだ。声をかけたのである。
「それは何よりじゃ」
「和上も。ご無事でしたか」
「陣に火を点けられた」
まずはこう言う雪斎だった。
「そしてあちこちで織田の者達が足軽達を闇から襲っておる」
「忍ですな」
「間違いないな」
それだというのだ。忍だとだ。
「それで夜襲をかけて来たわ」
「忍で夜襲ですか」
「妥当じゃ。しかしじゃ」
「はい、それまで使えるとは」
「織田は思った以上にじゃ」
どうなのかとだ。雪斎は眉を曇らせて言うのだった。
「人材が多いわ」
「確かに。忍までですから」
「やはり潰しておかねばな」
雪斎の結論だった。
「ここでじゃ」
「今川の為に」
「左様。織田を置いていては恐ろしい家になってしまう」
「しかしその織田を飲み込めば」
「そうじゃ。今川はさらに大きな家となる」
敵を併合すればだ。それによりというのだ。
そうした話をしながらだ。彼等はだ。
今の騒ぎを収めるのだった。火は消し敵襲は終わった。それは何とかだった。
だがその日はもう夜襲どころではなかった。そうしてだ。
朝になってだ。元康はこう将兵に言うのだった。
「今日はこのまま囲む」
「囲むと」
「そうされるというのですか」
「そして派手には攻めぬ」
昼も夜も攻めることに失敗してだ。それによってだ。
彼は一旦慎重策に入ることにしたのだ。そのうえでだ。
将兵にだ。こうも話すのだった。
「まずは様子を見る」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「機を見てまた攻める」
様子を窺うというのだ。彼は諦めたわけではなかった。
それでだ。砦を何重にも囲みだ。そうしてであった。
今川の兵達は今は様子を窺うのだった。だがその囲みはかなり厳重でだ。
夜襲を終え砦に戻った蜂須賀はだ。こう佐久間盛重達に話すのだった。
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