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戦国異伝
第三十八話 砦の攻防その四
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「来ましたぞ」
「鉄砲じゃな」
「はい、来ました」
 ここでもだった。木下が佐久間盛重に述べる。
「数は数十、五十程でしょうか」
「ふむ。五十か」
「ではどうされますか?」
 あらためて佐久間盛重に問う木下だった。
「ここは」
「よし、向こうが鉄砲で来るならばじゃ」
「こちらもですな」
「うむ、使おうぞ」
 まさにだ。その鉄砲をだというのだ。
「そうしようぞ」
「はい、それでは」
「さて、向こうはこれでまた驚くな」
 佐久間盛重は木下に応えながら笑顔でいた。相手を驚かすのを楽しみにする子供の様なだ。その笑顔でいるのだった。
「肝が潰れるぞ」
「そうしてこその戦でござる」
 木下はだ。その佐久間盛重よりも楽しそうに笑って言うのだった。
「ですから」
「戦は敵を驚かせることにあるのか」
「そう思いますが」
「そうじゃな。敵の思う通りのことをしては負けじゃ」
 読まれている、それは致命的だ。だからだ。
「ではじゃな」
「はい、それでは」
「よし、鉄砲をありったけ出すのじゃ」
 佐久間盛重は思いきった手を打った。そうするというのだ。
「よいな」
「そうして今川をですな」
「驚かせてやるわ」
 こうしてであった。彼等はだ。
 今川方が鉄砲を撃ちだしてきたのに対してだ。こちらもだ。 
 ありったけの鉄砲を出してだ。彼等に対して撃ったのである。82
 今川から見てだ。信じられない数の鉄砲が火を噴いた。それを見てだ。
「な、何っ!?」
「百!?いや、それ以上はあるぞ」
「我が方の優に倍以上はあるぞ」
「そこまでの鉄砲があるというのか」
 今川の者達がだ。驚きの声をあげた。
 実際に撃たれた者も出て傷を負っている。倒れている者もいる。
 そしてそれだけではなくだ。その凄まじい音を聞いてだ。
「何と、あれだけの鉄砲があってな」
「容易には陥ちんぞ」
「うむ、この戦」
「尋常なものではないぞ」
 士気にまで影響が出るのだった。
 その鉄砲の数と兵達の士気を見てだ。元康も目を曇らせた。そうしてであった。
 考える顔になってだ。こう言うのだった。
「ううむ、ここは」
「どうする、あそこまでの鉄砲があるとはのう」
 雪斎もだ。その鉄砲の数は予想以上だった。それでこうした言葉を出してしまった。
「これではじゃ」
「いえ、攻める手はまだあります」
 元康はだ。ここでその雪斎にこう答えた。
「まだあります」
「というとどうするのじゃ」
「まずはこのまま攻めます」
 攻め続けるというのだ。
「ただ僅かな、選りすぐりの強い者達は休ませ」
「今の攻めに使わぬのか」
「夜です」
 その時にだというのだ。
「夜に攻めます」
「夜襲か」
「それも真夜中にです」
「やる
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