第三十八話 砦の攻防その三
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そしてそのうえでだった。その元康に対してであった。
「では竹千代よ」
「はい」
「この砦陥としてみよ」
その引き締まった横顔を見ながらの言葉だった。
「よいな。そうせよ」
「無論そのつもりでございます」
「この鷲津、そして丸根を陥とせば清洲まで行ける」
「さすればそれから」
「そうじゃ。織田を屈せられるのじゃ」
「尾張を手に入れそして」
元康も言うのだった。
「都にですな」
「その為にもあの砦は陥とさねばならん」
それがだ。答えであった。
「わかったな。ではじゃ」
「はい、ここは何としても」
「鉄砲はあるか」
雪斎はここでだ。鉄砲も話に出すのだった。
「それは」
「鉄砲でございますか」
「それは幾つある」
鉄砲の数をだ。元康に問うのである。
「幾つあるか」
「数十程です」
「数十か」
「はい、数十です」
それだけだと答える元康だった。
「それだけあればどうでしょうか」
「先程の火矢にしてもじゃ」
雪斎は先程の元康の攻撃についても話した。
「普通の砦ならあれで陥ちた」
「あの火矢で」
「竹千代、見事である」
元康のその攻撃は褒めるのだった。
「あの場面はまさに火矢を使う場面じゃった」
「そう思い使いましたが」
「しかし。敵は思ったよりやる」
雪斎の眉が顰められる。そのうえでの言葉だった。
彼はだ。あらためてこう元康に言った。
「あの火矢も。前以て水を多く用意しておったな」
「それで消していますか」
「しかも。壕が思ったより広く深い」
このこともだ。火矢で攻めた時に影響しているというのだ。
「矢が思ったよりも届かん」
「それでなのですか」
「そうじゃ。こちらの攻撃は届かず」
そしてなのだった。こちらの弓矢は届かないというのだ。
しかもだ。それだけではなくだった。
「あちらの攻撃はよく届くわ」
「上から狙うからですな」
「うむ、丁寧に櫓まで築いておる」
それもまた大きかったのだ。織田方は櫓の上から次々に矢を放ってきている。それが今川方の兵達を容赦なく攻め立てているのだ。
今川の兵達は竹を束ねた盾でその弓矢を防ぎながら前に進んでいる。しかしそれとて用意ではなくだ。傷つく兵達が増えている。
それを見てだ。雪斎は言うのだった。
「これではじゃ」
「鉄砲を使うべきですか」
「あるものは何でも使うことじゃ」
戦のだ。まさに鉄則だった。
「それで攻めることじゃ」
「だからですね」
「その数十の鉄砲を使うのじゃ」
雪斎は言った。
「それで織田の者達を驚かせよ。よいな」
「はっ、それでは」
こう話してであった。元康はすぐに鉄砲を用意させ砦の壁の上や櫓から弓矢を放ち糞尿や煮えたぎった油をかける織田の兵達を狙い
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