第三十六話 話を聞きその七
[8]前話 [2]次話
「どうやら。これはです」
「最初から苦労しそうじゃな」
「そうかと。ここはです」
「まずは鷲津じゃな」
雪斎は最初に攻める場所を定めた。
「そこに敵将佐久間大学がおるのじゃな」
「はい、そこにです」
「手強い男じゃ」
将についてだ。雪斎は述べた。
「織田家の中でもかなりな」
「猛者と聞いております」
「うむ。その強さは尋常ではない」
「では。それを倒すのは」
「それだけでも容易ではない」
佐久間盛重だけでもだというのだ。
「ましてや。守りを固めているとなると」
「余計に」
「さらにそこに知恵者なりはしこい者がいると」
そうなればだとだ。雪斎の言葉は続く。
「陥とすのは。数日では無理であろうな」
「では一週間では」
「それで陥とせればよいのだがのう」
「一週間でもですか」
「どうも織田は違ってきた」
元康に話すその顔がだ。曇る一方である。
「先代の頃とは比べものにならぬ」
「尾張を一つにしただけではなく」
「一つにできたのは違ってきたからじゃ」
尾張の統一はだ。その一環に過ぎないというのだ。
「それが出ただけに過ぎぬ」
「では。今の織田は尾張を一つにした以上に」
「力があるのかもな。それがこの戦で出されれば」
「我等はどうなりますか」
「それが問題じゃ。我等とて敗れる訳にはいかん」
雪斎の言葉はここでも強い。
「何としてもじゃ」
「まずは二つの砦を陥としますか」
「必ずな。かける時間は短くじゃ」
短期決戦にするというのだ。戦においての常道の一つだ。戦いは長引かせない、孫子にも書かれている非常に重要なことである。
当然雪斎もそれを踏まえてだ。今元康に話すのだった。
「わかるな、竹千代よ」
「では。一週間以内に」
「それを目指すとしよう」
「わかりました」
そんな話をして、であった。彼等は兵を進めていた。しかしその元康のところにだ。
急にだ。後ろから使者が来てだ。こう彼に言ってきたのである。
「氏真様からか」
「はい、そうです」
氏真からだ。使者が来てである。そのうえで彼にこう伝えてきたというのだ。
「それなのですが」
「使者とは。何かあるのか」
「そちらは大丈夫かと」
こう尋ねてきたというのである。
「そう尋ねて来いとのことです」
「いや、それがしは常に大丈夫だと」
元康は少し苦笑いになってだ。そしてだ。
その使者にだ。こう述べたのであった。
「伝えてくれるか」
「はい、それでは」
「うむ。しかし氏真殿も」
元康はその氏真についてだ。こうも言うのであった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ