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戦国異伝
第三十六話 話を聞きその二

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「ではどう考えておられるのじゃ」
「奇矯なことを好まれる方だが」
「今度ばかりはのう」
「まことにどう考えておられるのか」
「全くわからぬ」
 他の家臣達もだ。こう言うばかりだった。
 山内もだ。それは同じでありこう同僚達に話す。
「さて。殿は今ものどかであられるが」
「あの方が大胆にしてもじゃ」
 今度は九鬼が言う。
「幾ら何でも今はのう」
「左様、諦められたのであろうか」
 山内はこんな考えもしたのだった。
「今川に降るとでも」
「まさか。それはないでござろう」
 長谷川がだ。山内の今の話を否定した。
「殿に限って」
「それはないか」
「織田はそこまで弱くはなかろう」
 長谷川が言う根拠はそこにあった。
「一万五千の兵がおり六十万石ぞ」
「今川には劣るが戦えるな」
 万見ははっきりと言った。
「充分な」
「その通り。しかも殿が誰かに降るか」
 長谷川はこのことも話した。
「とても考えられぬ」
「言われてみればそうじゃな」
 山内もだ。そうした話を聞いてだ。
 腕を組んでだ。考える顔になって己の考えを打ち消したのだった。
「それはないか」
「しかし。何故じゃ」
 今度は堀尾が言う。
「殿の今の余裕は」
「わしもわからん」
 今言ったのは彼等の中の首座と言ってもいい柴田であった。やはり彼は別格である。そうした意味で平手と並ぶ存在である。
「しかし。今織田は最大の危機じゃ」
「それは言うまでもないな」
「かなり危うい」
「果たしてどうなるか」
「わかったものではない」
 他の家臣達もこう話す。柴田の言葉を聞いてだ。
「今川の数は多い」
「苦戦は免れんぞ」
「しかし誰か離れるつもりの者はおるか」
 柴田は強い顔でだ。他の者達に問うのだった。
「ここには平手殿と大学殿、そして大学殿と同行する猿や小六達の他の主だった面々が集まっておる」
「そうじゃな」
 森も柴田のその言葉に頷く。
「ここにじゃ。ほぼ皆集まっておる」
「今から全員目を閉じる」
 柴田がまた言った。
「そして半刻経って目を開ける」
「その間に去りたい者は去れ」
「そう言うのでござるな」
「そうじゃ。そうするとしよう」
 これが柴田の今の考えだった。つまり危機を前にして団結を見るというのだ。
「それでよいか」
「それでは。権六殿の言うように」
「今より全員で目を閉じ」
「半刻」
 その間にだ。全てを決めるというのだ。そしてだ。
 柴田はだ。同僚達にこうも話した。
「今去る者は一切咎められぬ。殿にもわしが話しておく」
「そのうえで選べと」
「そういうのでござるな」
「そうじゃ。ここで決めよ」
 柴田の言葉は強い。何時になくだ。
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