第三十四話 今川出陣その十一
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「どうなのじゃろうな」
「わかっているのは佐久間大学だけですね」
「他は全くわからん」
また言うのであった。
「忍の者がいるのは厄介じゃな」
「そうですな。上総介殿の家臣は多彩なようですな」
「気になるのはじゃ」
雪斎の目が顰められている。
「あれじゃ。木下兄弟じゃ」
「その二人でございますか」
「織田の家臣は大抵調べておるがだ」
それは既にだった。まさに敵を知り、であった。
「その二人はよく知らぬ」
「武でしょうか文でしょうか」
「わからん。織田の家臣は実に多い」
そのことも信長の強みなのだ。彼には非常に優れた家臣達が多い。その彼等を縦横に使っているからこその今の尾張なのである。
「その中で頭角を表している様じゃがな」
「果たしてどういった者かは」
「やはりわからん」
どうしてもだった。それはだ。
「それでもじゃ。この度の砦の戦はじゃ」
「その二人が気になりますか」
「普通に考えれば陥とせる」
その二つの砦をだというのだ。
「二万五千じゃ。それはできる」
「だが、と言われるのですね」
「気になるのう。やはり」
こうした話をしながらだ。二人は今川の先陣として先に進むのだった。
そして義元はだ。輿に乗りだ。そこから軍を見ていた。
その軍は長い隊列を組んでいる。何処までも続く様だ。
己のその軍を満足した顔で見てだ。周りにいる馬上の家臣達に話した。
「よいものじゃのう」
「はい、まことに」
「天下への出陣でございますな」
「さて、ここはじゃ」
ふとだ。義元は上機嫌のあまりこんなことを言った。
「馬に乗るとするか」
「父上、それはです」
しかしだ。それはであった。
すぐ後ろにいる氏真が話してきた。彼は馬に乗っている。
中々見事な馬術だ。そのうえで父に話すのだった。
「お止めになった方がです」
「よいというのか」
「はい、今は大切な時でございます」
その上洛のことを話すのだ。
「ですから。ここはご自重を」
「仕方がないのう。では止めておくか」
我が子に言われだ。義元も考えを翻した。
そしてだ。そのうえで半ば自嘲してこんなことを話した。
「麿はどうもじゃ」
「馬はですか」
「そうじゃ。どうも苦手じゃ」
こう話すのだった。
「上手く乗れんわ。武士の嗜みだというのにのう」
「だからこそです。余計にです」
「ここはじゃな」
「はい、ご自重を」
また告げる氏真だった。
「くれぐれもです」
「そうするとしよう。ところでじゃ」
我が子の言葉に頷いてからだ。そうしてだった。
義元はだ。あらためてこう周りに告げた。
「兵達に伝えよ」
「はい」
「何でしょうか」
「出陣の間馬鹿なことはするなとな。そのことをしかと伝
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